表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1451/1509

神域への道114

 森の中は相変わらず薄暗い。空に目を向けてみるも、壁を越えたからいい天気とかはないようだ。

 周囲に気を配るも、動物の姿は無い。それどころか無風なのか、ヒヅキ達が動く事で起こる草の揺れる音など以外は何も音がしない。壁の向こう側でも、鳥や虫も消えているのだろう。

(まぁ、この木や草なんかも生きているのかどうか疑わしいが)

 現在ヒヅキ達が居るのは意図的に創られた世界なので、草木だろうとただの置物と変わらないのかもしれない。そう考えると、確かによく出来た世界ではあるが、途端に虚しくなってくる。

 この世界を創った者が何を想ってこの世界を創ったのかは知らないが、それでも展示品が並べられているだけの世界など博物館のようなものだ。いや、この場所にはろくに人が来ない以上、物置と表現した方がいいのかもしれない。もしくはそれ以下か。

 なんにせよ虚しい事には変わりはない。もっとも、実際のところはどうかヒヅキは知らないが。

 そんな事を考えつつも、周辺の警戒は怠らない。今のところ壁の向こう側と同じで、薄暗い森が何処までも広がっているばかり。

 森の終わりが見えてくるか、途中にでも開けた場所がないだろうかと探してみるも、見渡す限り何処までも森が広がっているだけ。

『ここはどれぐらい広いんだろうね』

 壁の内側も相当に広かったので、外側はどれぐらい広いのだろうかとヒヅキは考えてそんな事を口にする。森の広さはまだ分からないが、最低でも壁の内側と同じぐらいはありそうだ。

『総面積では不明ですが、森の深さは向こう側よりはあるようです』

『そうなんだ。またあの集落みたいな場所はある?』

『現在のところは森ばかりのようです』

『そっか。ならこちら側には誰も住んでいなかったのかな? 木は相変わらず同じ木のようだけれども』

 ヒヅキは周囲の木に目を向けて、呆れたようにそう付け加える。

 壁の内側だけでも森は相当広かったというのに、外側の森も含めて同じ木となると、一体どれだけの規模で実験を行っていたというのか。そしてそれに何の意味があったのだろうか。

(これで意味はないとか、造り過ぎただけとかだったら心底呆れるが)

 森を進みながらこの場所について考えてみるも、さっぱりその意図が掴めない。仮に人造神作製の為だったとしても、規模がおかしい。

(ここまで来ると、何かを隠す為だったとか考えられるが……あの日記には何か書いてあったっけ?)

 フォルトゥナの推測を基に考えながら、ヒヅキは最も手掛かりになりそうな日記の内容を頭の中に思い浮かべていく。

(あの日記は業務日誌みたいな感じではなかったからな。最初の方はちゃんと記録みたいな感じだったけれど、途中から実験が順調で嬉しいとか、やはり自分は天才だとか、そういった感想とでも言えばいいのかが増えてきて、完全に日記になっていたからな)

 それも実験に詰まった後半には狂っていったが、概ね日記と呼べる代物だった。それでも途中途中で記録も混ざっていたので、完全に日記とも言えない。

 それはそれとして、ヒヅキは日記の内容を思い出していくと、そういえばとある一文を思い出した。

(確か最初の方で、道具を地下に運んだ。みたいな事が書かれていたような? という事は、実験場がここに在るのだとしたら、それはこの空間の地下という事なのだろうか?)

 そう考えたヒヅキだが、それはそれで面倒さが増すばかり。それに地下へというのであれば、地上部分に建物か何かしらの目印でもあるだろう。あの日記を読むに、人造神の作製は国家事業かそれに近い大事業のような感じであったのだし、地下への道を隠している可能性はそれほど低くはないかもしれない。

(でも内容が内容だしな。いや、こんな場所だから逆にそこまで隠す必要性もない? うーん、迷いそうな森だし、地下が在るにせよ何かしらの目印ぐらいはおいていそうだけれども)

 森の中を進みながら、ヒヅキはどうだろうかと頭を捻り続ける。それと共に、他に何か参考になりそうな内容はあっただろうかと、日記の内容を思い出していくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ