神域への道111
白い球体と小石を見比べて首を傾げるヒヅキの横で、フォルトゥナは不意に思い出した事について考える。
(そういえば、あの畑で収穫出来た植物の核にも似ているような? むしろあちらに近いですね。しかしそうなると、僅かに小石に近い感じがしているあの白い球体は……ふむ?)
さて、これはどういう事だろうかとフォルトゥナは思案する。以前建物内に在った畑に植わっていた動く植物、その核であった光る球体。その光る球体に近い感じがする小石。
その2つほどではないにせよ、小石と似たような感じがする白い球体。そうなると、もしかしたら白い球体と光る球体も似ている部分があるのではないかと思ったフォルトゥナは、光る球体について思い出せるだけ思い出していく。
そうして記憶に在る光る球体の情報と、ヒヅキが持つ白い球体とを脳内で比較してみる。そうすると、光る球体というよりも、その奥に感じられた何かが白い球体と似ているような気がした。
(あれは多分今代の神の力ではないかとヒヅキ様は仰っていた。という事は、あの白い球体は今代の神の力に似ているという事になる。同一ではないと感じるので、白い球体は今代の神の力という訳ではないとは思いますが……そうなりますと、白い球体を置いていったあの黒髪の人物は、今代の神に近い何かなのでしょうか?)
大分正解に近づいたようにも感じるが、フォルトゥナは何かが抜けているような感じもしていた。まだ確証も無いので、ここであれこれ考えていてもしょうがないのだろうが。少なくとも、必要な情報がまだ揃っていないだろう。
白い球体と小石を見比べていたヒヅキは、分かったような分からないような微妙な表情で白い球体を空間収納へと仕舞う。
『さて、それじゃあ次は、この小石は何処でどう使うのかだね。海と砂浜を全部調べてもこれ1つしか無かったし、多分何処かで何かをする鍵になるんじゃないかなとは思うのだけれども』
小石を手のひらで転がしながら、ヒヅキは自身の考えを口にする。海と砂浜に関しては、行けるところは全て調べたので、使うにしてもおそらく陸上の何処かであろう。
仮に小石を持っているからこそ発見出来るのだとしても、まだ陸上は調べていないのだから、それを調べ終えてからでも問題ない。
後はどんなところで使用するのか、というのが分かれば非常に喜ばしいのだが、そうそう上手い話は無いらしい。せめて分かりやすいところであればいいのにとは思うが、こればかりはどうしようもないだろう。鍵というのもヒヅキの推測にすぎないのだから。
『まずは砂浜を出ようか』
『はい』
ヒヅキとフォルトゥナは海を背にして砂浜を歩く。現在地は空間の端っこなので、始点とするにはちょうどいい。後は砂浜を出た後の進む方向を縦か横か決めればいいだけ。
しばらく砂浜を歩いた後、ヒヅキ達は荒れ地に戻る。壁の向こう側まで続いている荒野だが、ヒヅキ達が立っている付近からは芝のような小さな草が目立つようになっていた。
それは先の方まで続いているようで、このまま放置していれば草原になるかもしれない。もしかしたら、元々草原だったのかもしれないが。
そんな事を考えながらも、ヒヅキは真っ直ぐ廊下の方を目指して進む事にする。横の長さは調べたので、次は縦の長さも調べておこうかと思いながら。




