神域への道106
それから更にしばらく歩くと、ようやく荒野の終わりが見えてくる。荒野の終わりは砂浜だった。
遠くの方に白い砂浜が見える。その先には海が広がり、寄せては返す波が確認出来る。
『あの海は存在しているのだろうか?』
ヒヅキの感知では壁のようなモノは確認出来ないが、それに関しては自信が無いので、ヒヅキはフォルトゥナに尋ねる。
『はい。どうやら海を少し進んだ場所がこの空間の終端のようです』
『そうか。結構広かったな』
廊下から進んだ道のりを振り返り、ヒヅキはそう感想を零す。
1階分の廊下とどちらの距離が長かったかと言えば廊下だろうが、それでも広さであればこちらに軍配が上がるだろう。
『後はここに何か在るのかどうか、だな。無ければ他の場所も探さないといけないし』
それは面倒だと、ヒヅキの声音は訴える。終端部分だけ探すにしても、どれだけ広いというのか。横幅も来た道と同じぐらいに広がっているのだとしたら、それだけでやる気が削がれてしまう。
そんな会話をしている内に砂浜に到着する。砂浜部分も広く、海まではまだ大分距離がある。
それでも遠くに確認出来るぐらいの距離なので、近いような気になってしまう。
『ここは奇麗な砂浜だね』
足下の白い砂はサラサラとしていて、砂以外の物が何も混じっていない。周囲を見回してみても、岩や石や流木などが一切確認出来なかった。
まるで誰かが徹底的に管理しているようなその砂浜だが、どれだけ確認しても誰かが居る気配はない。建物が建っている様子もないようであるし。
砂浜は足を取られるので歩きにくい。それでも、風の結界のおかげで砂が靴の中に入ってくるという事はないようだ。
『足下が砂という以外は、荒野とそう変わらないか』
砂以外に何も無い様子に、ヒヅキはそう呟く。昇降機とまでは言わないが、そういった分かりやすい終わりが何処かにあれば話は簡単なのだが、どれだけ周囲を見渡してみても、それらしきモノは何処にもない。
これは別の場所も探さないといけないのだろうかと、ヒヅキは少し面倒そうにしながら思考を巡らせる。
『海の中も入れるのだろうか?』
『壁際までは海は続いているようなので、問題なく入れるかと』
『そうか。魚か何か居るかな?』
『今のところはそういったものは確認出来ていません』
『そっか。じゃあ海の中も調べた方がいいね』
『はい。その方が確実かと』
海の中も感知魔法で調べられるが、地上と違って海中も勝手が違う。なので、もしも浅くとも確実とは言えないだろう。
そうして海中という要素も加わり、探索の範囲が広がる。それに海中であれば、見渡すだけで済む話ではなくなったので、より面倒さが増してしまった。
そもそも本当に何かあるという確証は無いので、ヒヅキはこれからの探索を想って小さく息を吐き出す。荒野を進むだけでも気疲れしたというのに、より面倒な事になりそうだった。




