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神域への道104

 目の前まで来ると、建物の細部まで分かるようになる。ヒヅキ達は警戒しつつも、まずは建物をぐるっと1周してみる事にした。

 少々年代を感じさせる見た目の建物は、思ったよりは大きい。それでも、六人かそこらで住むのが精々だろう。

(外観に反して中は広いという可能性も在るが)

 魔法に依らずとも、地下が在るという可能性だって在る。というより、建物の周囲には井戸すら無いので、水の確保を考えれば存在していてもおかしくはない。全て魔法で賄っているという可能性もあるにはあるが、それはそれで大変なのだ。

 もっとも、家の中に井戸が在ったとしても、それが地下室が在る根拠にはならないが。

 そうして家の周囲を回ってみたが、普通の民家といった印象しか受けない。建物が少し大きいとは思うが、それに関しては大した問題ではないし、汚れが目立ってきているのも珍しくもない。

(それにしても、窓が無かったな)

 正面扉の前まで戻ってきたヒヅキは、そういえばと思い出す。

 明かり取りだろう小さな穴は上の方に幾つか開いていたが、外から中を覗けるような窓はひとつもなかった。扉も正面にひとつきり。そういう造りの家も在るだろうから、おかしくはないのかもしれないが。

 こんな場所に誰かが居るとも思えないが、それでも念の為にヒヅキは扉を叩いて呼びかけてみた。

「………………」

 それで反応が無かったので、今度は少し強めに扉を叩き、声量も大きくして呼びかける。だが、結果は同じ。

 フォルトゥナも感知していなかったようだし、やはり誰も居ないかと思い、ヒヅキは扉を開けてみる事にした。

 罠の有無に関しては最初に確認済みなので、そのまま扉を開ける。

 扉は引き戸なので扉を横に動かす。どうやら鍵は掛かっていなかったようで、すんなりと扉は開いた。

 家の中は薄暗かった。明かり取りの穴から外の光が入ってきていると言っても、蝋燭の明かりよりは明るい程度。それでも見渡すには十分な明るさはある。

(かび臭いとかはないのだな)

 長い間放置されていた家特有の臭いというのが感じられずにヒヅキはそう思ったが、直ぐに風の結界について思い出す。

『そういえば、この辺りにも毒は蔓延しているのかな?』

 森の中ならばともかく、こんな荒野ばかりの場所でも毒が漂っているのだろうかと思ったヒヅキは、フォルトゥナにそう問い掛ける。毒が無いのであれば、風の結界を解いてみてもいいだろう。

『いえ。この辺りは乾燥しているだけで、少々埃っぽいだけのようです』

『そっか。なら、風の結界を解いても大丈夫そうだね』

『はい。もう毒の影響はないかと』

 フォルトゥナの言葉に、ヒヅキは風の結界を解く。それだけで空気が一変した。

『確かに乾燥しているね』

 息を吸うだけで口の中の水分が一気に持っていかれそうなぐらいに乾燥している空気に、ヒヅキは僅かに眉根を寄せる。

 そんな場所だからか、臭いの方はあまりしない。フォルトゥナの言葉通りに少々埃っぽく、そこら辺を叩けば大量の埃が舞いそうな雰囲気がある。

『……やっぱりもう少し風の結界を張っとくか』

 水の魔法で身体周辺を霧状の水で覆った後、少し落ち着いたところで風の結界を展開した。おかげで少しだけ空気が潤い、埃っぽさが抜けた気がした。

 その後に室内を調べていく。

 家の中は広い部屋が3つ連なっているだけであったが、それとは別に個室と台所も一応在った。ヒヅキの予想通りに井戸は台所の隅で見掛けたが、既に枯れていた。

 家の中はもぬけの殻と言えばいいのか、誰かが住んでいた形跡はあるのだが、引っ越した後といった感じで何も無い。

 しかし、そこまで長く放置されているという感じがしないのは、あの原始的な集落と同じだった。

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