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仕事15

 翌朝。

 空が白みだす少し前にヒヅキは部屋へと戻ると、少し眠りについた。

 1時間ほどして目を覚ましたヒヅキは、身支度を簡単に済ませてから部屋を出る。

 まだ薄明かるい外へと出ると、未だにスキアの気配がする北と東へ顔を向けた。

「…………」

 意識を集中させてみると、大量のスキアが集まり、少しずつ合流するように動いているのが分かった。

 スキアの足の速さを考えれば、その気になれば直ぐにでも合流も、砦との距離を縮める事も可能な距離だろう。

 今はまだ攻め気は感じないものの、それが逆に少々不気味であった。

「スキアが集団行動、ね」

 ヒヅキが今まで遭遇したスキアは、単独行動か少数での行動ばかりであった為に、話は聞いていてもはじめて感じる光景であった。

 現在感じる数だけでも百は優に越える。それだけの数を相手にするというのは、ヒヅキでも流石に厳しく、想像しただけで拳を強く握ってしまっていた。

 そうしてスキアを警戒してどれだけの時間が経ったか、空に占める青の割合がかなり増えた頃、ヒヅキの背に可愛らしい声が掛けられた。

「おっはよー、ヒヅッキー! どったのそんなところに突っ立って?」

「おはようございます。シラユリさん」

 それにヒヅキが振り返りながらそう返すと、案の定そこに立っていたのはシラユリだった。

「いえ、少々スキアの動向が気になりまして」

「ん?」

 その言葉に、先ほどまでヒヅキが向いていた方へと目を向けたシラユリは、スッと目を細める。

「んー、こりゃちょっと厄介な事になってるね」

 ポツリと呟かれたシラユリの声音は、ヒヅキが久方ぶりに聞く真面目な音色だった。

「出発まで動きがなければいいけど……それにしても、あの数の相手が出来る砦が今のこの国にあるのかな?」

「どうなんでしょうね。流石に国の内情までは分かりませんけど」

「戦力を分散させ過ぎた弊害かな。それでも分散せざるを得なかったんだけどね」

 シラユリは小さく肩をすくめると嘆息する。

 スキアの相手は冒険者にしか出来ない。ヒヅキのような例外はほとんど存在しない。そのスキアと戦う為に、政治を嫌う冒険者を戦場まで引っ張りだしたところまではよかった。

 しかし、スキアの数が異様に多く、砦全てに十分量の人員を配置させるのは厳しい状態であった。それでも無理して分散させて配置させた結果、予想外にスキアが集中攻撃を敢行した。

 そして、冒険者の数は減りに減って現状では、より人手不足に陥っていた。それに加えて、スキアの大攻勢。前線が下がりすぎて、もう王都が間近まで迫っているギリギリの砦がほとんどの状態で、それはこのケスエン砦も同じであった。

 このままどこかで好転出来なければ、現状のカーディニア王国は既に詰みかけていた。

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