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神域への道102

 塚を築いていくといっても、念の為に魔法は使わないでの手作業なので、高さはフォルトゥナが築いた塚よりも低くする予定。要はここが1度通った道だと判ればいいだけなので、それほど高さは重要ではないのだから。

(まずは土を集めて……)

 フォルトゥナの案を採用した後、ヒヅキは最初に周囲の土を手でかき集めたが、フォルトゥナが魔法で周囲の土を掘り返して集めているのを見て、ヒヅキもそちらに切り替えた。

 どうも魔法を使わないで、という部分に意識が引っ張られていたようで、土集めの段階から魔法を使わないと思い込んでいたようだ。

 だが、大事なのは魔法で出した物ではなく、周辺の土を使って塚を築く事。そうなると、土を盛り上げるのも魔法でもいいのかもしれないが、塚が無くなると困るので、そこは手作業でする事にしている。

(もっとも、念を入れるならば土を集める段階から手作業というのも意味はあるのだろうが。それ以前に、ここの土を使うというのが実は1番心配なんだよな)

 おそらく土を掘り起こしたところで、時間が経てば元に戻っている事だろう。この辺りは建物の床や壁なんかと同じだと思われた。

 そんな土である。塚を築いたところで、魔法とは関係なくそれも戻るのではないか、という不安はあった。だが、そこまで心配していると何も出来なくなりそうなので、とりあえず手作業で塚を築く程度で考えるのを終えておく。

(それにしても、土いじりというのも懐かしい)

 ヒヅキも昔は毎日のように畑作業などで土に触れていた。ヒヅキはそれをふと思い出したが、今やっている作業はどちらかといえば子どもの遊びに近い。それに思い至り、ヒヅキは自嘲するように僅かに口角を上げた。

(俺にもそんな日があったのだろうか?)

 もう思い出そうとしても思い出せない記憶に、ヒヅキは諦観を籠めた息を小さく吐き出す。それが単なる忘却なのか、それとも喰われた事による消却なのかは定かではないが、どちらにせよ思い出せない事には変わりない。

 であれば、それはするだけ無駄な時間だと捨て去ると、ヒヅキは黙々と土を集めては塚を築いた。

 そうして作業に集中していると、気づけば幾つもの塚がそこら中に出来ていた。中には膝丈を越える高さの塚もある。どうやら作業に集中し過ぎていたらしい。

(最初から複数個は造っておくつもりではあったが……)

 フォルトゥナの方も少し離れた場所で塚を幾つも築いていた。だがそちらはヒヅキとは違い、規則正しく並べられている。しかも型に嵌めたかのように高さも大きさもほぼ同じで、その様子はまるでその道の横線を示しているかのようだった。

 ヒヅキは自身が築いた塚の方へと視線を向けてみる。そちらには、乱立とでも言えばいいのか、思いつくままに造りましたと言わんばかりに高さも大きさも異なる塚がポコポコと生えている。

 作業中は何も考えないように無心で集中していたとはいえ、流石にその違いは恥ずかしかったらしく、ヒヅキは造り直そうかと一瞬本気で考えてしまった。

 だが時間はおしいので、諦めてヒヅキは先へと進む事にする。それはそれでここを通ったまたとない証拠になるだろう。

 ヒヅキとフォルトゥナは自前の水魔法で手を洗うと、移動を再開させる。

 道中は魔法で塚を築いてみたり、手作業でまた塚を築いてみたりしたが、こちらはただの気紛れに近い。確認だけならば最初の塚だけで十分なのだから。

 そんな事をしながら進むも、一向に地平の彼方に荒野以外は見えてこない。同じ場所を回るにも1周が長いのか、それとも本当に荒野がそれだけ広いのか。

 道中は魔導の練習や新しい魔導の修得などに充てればいいので問題ないが、それにしても広かった。もしもこれが推測通りに何者かの力によるものだとしたらと考えると、ヒヅキは少しだけ背中がひやりとするような気分になったのだった。

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