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神域への道97

 点々と続く切り株だが、途中からそれも無くなる。しかし、切り株が続いていた方角へと歩き続けていると、開けた場所に出た。

『集落が在ったけれど、やはり誰か居る気配はない。でも、この建物は結構奇麗かも?』

 開けた場所には、数件の家が建っている場所が在った。木材を組み上げただけのような単純な造りの家のようだが、それでも最初に見かけた建物のように崩れている家は見掛けない。

 近づいてみると集落との境界でも示しているのか、木の柵ではなく木を縦に半分に割っただけの物が集落を囲むようにして置かれていた。

『これに意味があるのだろうか? 入り口部分とか関係なく集落を囲っているけれど、簡単に跨げる程度の高さだし、むしろ足を引っかけないように注意しなければならないだけの気が……』

『これでも一応障害物にはなりますし、小動物程度の侵入であれば防げるかもしれません』

『そうだね。でも、そういった小動物はそうそう集落には近づかないだろうし、近づいてきてもいい獲物になると思うけれどね』

『はい。なので、ただの領有権の主張ではないかと。直ぐ外側に堀でもあれば違ったのでしょうが』

 その囲いを越えて、ヒヅキ達は集落を目指す。あまりにも簡素な囲いだったので、もしかしたら越えた先に落とし穴でもあるのかとも考えたヒヅキだったが、結局何も無かった。

 集落はどう見ても素人が建てましたといった感じの粗末な家が何軒か建っているだけ。それも配置をあまり考えていなかったのか、集落内の移動が少々面倒だった。

 集落の建物はどれも引き戸で、鍵は扉と壁の間に棒を立てかけるだけというとても簡単なもの。崩れた建物に取り付けられていた鍵を考えれば原始的とさえ言えた。

『こちらは壊れていないのに、あちらの建物とやけに文明に差があるな。もしも同じ世界からだとすると、こちらの方が奇麗だし、文明が崩壊でもしていたのだろうか?』

 それともここの住民は追放でもされたかと思ったヒヅキだが、詳細は分からない。集落内で立派な枝の先端を削っただけの槍とか木製の皿なんかを見つけたが、どんな人物が住んでいたのか分かるような物はなかった。

『それにしても木製の品ばかりだな。家には金属製の釘が使われているから金属が無い訳ではないようだが、余程貴重だったのかな?』

『この周辺には他に人里が無いのかもしれません』

『鍛冶場っぽい場所もここには無いからね、もしも鉱石を見つけたとしても金属は精製出来なかったのかもしれない』

(本当に原始的だな。俺の村でも鍛冶師が一人居たのだが)

 ヒヅキが育った村は、農耕ばかりの小さな村だ。それでも、包丁や農具を直す程度は出来る鍛冶師は村に居た。それは比較的恵まれた村ではあったのだが、それでも近隣の村々に一人ぐらいはそういった事が出来る者が居るものだった。

 もしくは、流れの鍛冶師がたまにやってきて仕事をしていくので、その鍛冶師が使えるような簡単な鍛冶場ぐらいは何処かに用意されている場合もあった。なんにせよ、そういった痕跡すら無い。

『火を起こすのも苦労していたようだし』

 煮炊きするための竈が在ったが、そこに火打石が幾つか置かれていた。焦げた木の板と棒なんてものまで一緒に置いてあったので、どこまでも原始的な生活だったらしい。

『魔法が存在していなかったのでしょうか?』

『それか使えなかったかだね』

 エルフであるフォルトゥナにとって魔法は使えるのが当然のモノではあるが、人間であるヒヅキにとっては、魔法が使えないというのはそう珍しい話ではなかった。

 もっとも、何処の世界の集落かも分からないので、魔法が存在していないという可能性も勿論ある。

(その場合、あの崩れた建物とこの集落は世界が違うという事だろうが。それとも、途中で魔法が失われた世界とでもいうのだろうか?)

 そんな事を考えつつも、ヒヅキ達は自身の考えを話し合いながら集落を見て回ったのだった。

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