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神域への道94

 床を削るようにして少しずつ消していく。何の石材かは分からないが、フォルトゥナの消去魔法の前には他と変わらないようだ。

 それから少しして、扉の前に小さな穴が姿を現す。1辺5センチメートルほどの四角い小さな穴。しかし、深さはかなりあるようで、覗いてみても闇が満ちているばかり。

 ヒヅキは光球を現出させて穴に近づけてみる。しかし、周囲を照らすだけの光球では、闇を濃くするだけに終わる。かといって、光の剣を穴の中に突っ込めば、中に何か入っていた時に大変な事になってしまうだろう。

 光球を消した後、ヒヅキはどうしたものかと思案する。女性のようなただ光るだけの球体を出せればよかったが、ヒヅキはあれについてはよく分かっていなかった。

 そんな風に考えていると、フォルトゥナが幾つかの魔法を並行して現出させていくのを感知する。

 それに気づいたヒヅキがそちらの方に顔を向けると、フォルトゥナが女性が行使していた光球のようなものを現出させて、それを取り囲むように魔法を行使していた。

『その光球は魔導?』

『いえ、魔導の出来損ないのようなものです』

『魔導の出来損ない?』

『はい。ご存知のように、魔素は魔力よりも強い力の塊です。その魔素を素に魔導を行使致しますが、その前段階に目的の魔導に沿うように魔素の方向性を定めるという作業があります。その際に幾ばくか無駄になってしまう力が御座いますが、この光球はそれをわざと盛大に起こしているのです。どうやら力は無駄になる際に光となって消耗されるようなので、それを明かり代わりに出来るほどの光量になるまで人為的に起こしているという訳です。ただ、これはあまり効率のいい方法ではないので、長時間の使用は難しいのですが』

『なるほど』

 無駄な力が消耗する際に光になる事についてはヒヅキも知っていたが、その光量は暗い場所なら視認出来るかも程度だったので、それを利用して明かりにしようとまでは思いつかなかった。これはヒヅキが既に光球を使用出来るので、似たような明かりに必要性を感じていなかったという部分が大きいのだが、それでも視野が狭まっていたように感じて、ヒヅキは内心で苦笑してしまう。

 余談だが、フォルトゥナが使用している光球と女性が使用していた光球は別物である。ヒヅキは気がつかなかったが、女性の方は火系統の魔法である。もっとも、多少特殊な使い方をしていたようで、そのせいでヒヅキは分からなかったようだが。これは経験と知識が足りていなかったのでしょうがない。

『それで、それをどうするの?』

 ヒヅキが遠くの物を見る際に使用したように、フォルトゥナは光球を闇で包んでいく。それと共に小さな水の球も組み合わせる。

 そうして出来上がったそれによって、光を周囲ではなく前方を照らすように伸ばしていた。

『こうやれば、底の方まで光が届くかと』

『なるほど』

『光を反射させようかとも考えましたが、こちらの方が扱いやすいですから』

『そうなんだ』

 どちらかと言えば光を反射させた方が簡単そうだなとヒヅキは考えたが、それは気軽に光球を現出させられるヒヅキだからだろう。光球を出さずとなると、現在地の森の中では薄暗すぎるのだから。

 フォルトゥナが使用している光球は、フォルトゥナが言うように効率が悪く、また力を無駄にしているので管理もまた難しい。それこそ少しでも調整を間違えば、ヒヅキが使用している光球よりも容易に爆発しかねないほどに。

 そんな危険なモノを維持しながら、水の魔法などで光を反射させるというのは、維持やら計算やらと色々面倒なのだ。

 閑話休題。

 フォルトゥナの創り出した指向性を持たせた明かりで、穴の中を照らす。そうすると、底の方に何かが光を反射させたのが分かった。

『なんだろうか?』

 そう思うも、それを取り出すには穴が小さいうえに深い。光を反射させているそれは、見た感じ鍵のようなのだが、指を入れても到底届きそうもない。なにせ穴の深さは、目測で50センチメートルぐらいはあるのではなかろうかというほどなのだから。

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