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神域への道90

『あれ? 部屋が無くなっている?』

 ヒヅキ達が来た道を戻ってみると、途中に在ったはずの部屋が無くなっていた。

『永遠と廊下が続いているだけだね……』

 遠くの方に目を向けてみても、扉や窓らしきものは一切見当たらない。あるのは延々と続いている廊下だけ。

 確かここら辺に部屋が在ったはずだがと、ヒヅキは近くの壁に手を当てる。

 ペタペタと壁を触ったり軽く叩いたりしてみるが、そこには壁が在るだけ。どうも内部が空洞という感じでもなかった。

 ヒヅキはどういう事かと思いながらも、来た道を戻っていく。どの部屋も消えて壁になっているので、戻る速度は行きよりも速い。

『部屋が変化する事があるとは聞いていたけれど……』

 こういう変化ではないだろう。ヒヅキはそう続けようとして、口を閉じる。言葉にしたところで意味はない。そもそも、何が起きても不思議ではないと考えていたのはヒヅキ自身なのだから。

 それよりも、これからどうするかの方を考えなければならない。行きは廊下が断絶していて、帰りは道しか残っていない。

(これで来た道をもう1度引き返したら、断絶していた道が繋がっているという可能性もありそうだが)

 そう思ったものの、ヒヅキは小さく首を振る。確かにその可能性はあるが、そうなっていない可能性もあるのだ。せめて何かしらの打開策ぐらいは考えておきたいところ。

 それからしばらく歩くと、黒い部屋が在った場所に到着する。

『ここは部屋が残っているのか。……中身が変わっているけれど』

 行きでは黒い部屋だった場所は、他と違い部屋が消えずに残っていた。しかし、室内の様子は黒一色から変化していた。

『……ここは屋内のはずなんだけれどな。相変わらずよく分からない場所だ』

 廊下から覗いた部屋の中の様子は、まるで何処かの深い森の中のようだった。

 視界の隅に崩れた廃墟のような建物が在り、眼前には開けた場所と、それらを囲む薄暗い森。

 天井の方に視線を向けてみると、何処までも高い空が広がっている。ただしその空は、冬の日の曇り空のような灰色をしていた。

 森の方に視線を向けてみると、背の高い草から今にも何かが飛び出てきそうなほどに暗く、木々もまるでこちらを見ているかのように不気味な様相をしている。

 こんな場所に在った建物というのは、一体どんな存在がどのような目的で使用していたというのか。そんな想像をかき立てるほどに妖しく、息を呑むような雰囲気があった。

 窓から見える範囲で確認した後、ヒヅキは耳を傾けてみるが、廊下に音が漏れないようになっているのか、はたまた何も音を立てるモノが存在しないのか、何も音が聞こえなかった。

 今までも屋外のような部屋は存在したが、今回はそれとは訳が違う。どうみても今までの部屋よりも広く、ヒヅキには本当に屋外に続いているようにしか思えなかった。

(ここは地下だったはずとか、建物の外は何も無いのではなかったのかとか、そんな事は今更どうだっていいが、果たしてこの先には何が待ち受けているというのか)

 なんとなく躊躇してしまう雰囲気に、ヒヅキは1度深呼吸をして気持ちを落ち着ける。まずはこの中に入るかどうかを決めなければならない。この部屋に入らずとも、廊下はずっと先まで続いているのだから。

『フォルトゥナ。この部屋は今までとは違う気がするけれど、入って大丈夫だと思う?』

『ここから罠の類いは確認出来ません。それに敵性反応もありません。というより、あの草木も本物かどうか……』

『まぁ、廊下からだと室内の様子はよく分からないからね』

『はい。とりあえず、入る分には危険性は無いかと。ただし、入室後にこちら側に戻れるかどうかは不明なので、まずは私が先に入って確かめたいと存じます』

『分かった。任せるよ』

『御任せ下さい』

 ヒヅキがフォルトゥナの提案を受け入れたところで、早速フォルトゥナは単独で室内に入ってみる事にした。

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