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神域への道88

『名前までは存じ上げませんが、ヒヅキ様に白い球体を渡して消えていったあの者です』

 フォルトゥナにそう言われて、ヒヅキは改めて映像の人物に意識を集中させる。

 ヒヅキに白い球を渡して消えた存在は、全身を覆うほどに長い黒髪をした人物で、髪で全てを覆っていたのでどんな顔をしていたのかも分からない。

 身体つきは細身だったとは思うが、体型も何もかもが髪で隠されていたので確実ではなかった。性別も、おそらくは女性という程度。

 一応声を聞く事は出来たが、酷く不鮮明で何を言っていたのかすら分からなかったほど。

 そんな人物と映像の人物が同一人物だとは全く思い浮かばなかったが、フォルトゥナにそう指摘されて見ると、どことなく雰囲気が似ているような感じがしてくる。といっても、怨嗟を煮詰めたようなどす黒さは感じないが。

『まぁ、あちらもこの映像の相手同様に黒髪だったし、背丈も同じぐらいではあったけれど……』

 映像の中には白い服を着た姿もあったが、それでもやはり二人の姿が重なる事はなかった。ただ、それでもなんとなく似ている感じだけは感覚の隅に引っ掛かって消えてはくれないが。

『似ている…………のかな? 結局長い髪しか見ていないからなんとも言えないけれど、もしもこれがフォルトゥナの言う通りだったとしたら、この光の下を歩いているような輝かしい人物が、あの闇の中の住人のような暗い感じに変化するのか』

 一体この人物に何があったのだろうか。同一人物だと仮定すると、どうしてもそんな疑問が浮かんでしまう。

 おそらくではあるが、あの時の暗い人物と映像の人物はそこまで別の時間を生きていないと思われた。という事は、それだけの短期間で映像の人物があそこまで怨嗟に塗れたようになる原因というのは、如何ほどに凄惨なものなのか。

(髪があれだけ伸びる期間、という事なのだろうか?)

 映像の人物とあの時の人物の違いを考えてそう思うも、なんとなくそれほど長く経過している訳ではない気がした。ではどうしてかと考えるも、髪の伸びる速度が早かったという程度しか思いつかない。

『あの人物も白い球体を置いていったっきりで、あれから影も形も見ないからね』

 今でもあの白い球体がなんなのか分かっていない。今代の神との戦いで必要だろうとは言われていても、どう必要なのか、もしくはどう使用するのかさえ分からないのだ。

 何かそれの手掛かりになる事はないかと、ヒヅキは映像を注視する。しかし、映像には楽しげな人物が映っているだけで、周囲の風景は何も映っていない。

『それにしてもこの服装は少し変わっているね。やっぱり住んでいる世界が違うという事か』

 ヒヅキが見慣れた服と似たような形の服装もあるのだが、全体的にそれらの服よりも映像の服の方が洗練されている感じがした。それに、細部まで丁寧に作られているのだろうと思える姿もあって、映像の世界の技術の高さが窺えた。

 それから程なくして、映像が終わる。結構長い映像だったが、終始同じ人物の姿だったので何の為の映像だったのか不明であった。成長記録ではなさそうだったので、観察記録とでもいうのだろうか。

 他に何か仕掛けはないのかと、ヒヅキ達は部屋の中を調べていく。しかし、先程の映像以外に何か仕掛けがあるという感じもない。

『一体何だったのだろうか?』

『映像記録なのでしょうが、何の為に見せられたのかは不明ですね。ここに入ると自動で作動するだけで、映像自体に意味は無かったのかもしれませんが』

『まぁ、その可能性も高いね』

 今までが今までだけに、意味は無いのではないかというフォルトゥナの推測をそんな馬鹿なと否定は出来ない。むしろ、そうだろうと納得してしまうほどだ。

 黒い部屋から廊下に出たヒヅキは、部屋の方を一瞥して先へと進む事にする。結局、あの暗い人物の顔が分かったかもしれない程度のどうでもいい収穫しか得られなかった。

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