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神域への道83

 部屋とその前の廊下も調べたヒヅキ達は、改めて石像を調べてみる。まずは部屋の中に在る男性の石像だ。

 その石像は何度見ても人そのもので、今にも動き出すのではないかと思えてくる。それだけに、仮に本当に石像が動き出したとしてもヒヅキ達は驚かないだろう。

『それにしても、何故この石像とあの石像だけここに在るのだろうか?』

 今までそういった、その部屋に直接的に関係していそうな何者かの存在は発見出来なかった。なので、何度見てもどうしてもそう思えてならない。

『それにこれ、誰かが彫って造ったという感じでもないし』

 目の前に在る石像は部屋同様に模造品だろうが、それでも実際のそれと並べても区別がつかないだろう。それだけ精巧に模倣されているそれを観察する限り、眼前の石像はあまりにも滑らか過ぎた。

 どれだけ観察してみても、どこにも彫った感じはないし、整えた様子もない。細かな皴や両腕を広げた躍動感のある動きなども見事に再現されていて、そんな場所にも人の手が入った様子が一切感じられなかった。

 質感もまた、人だろうと思わせる艶やかな感じで、材質が本当に石なのかどうか疑わしく思えてくる。

 そういった訳で、ヒヅキにはどうも眼前の石像が誰かが彫った作品とは思えなかった。

『とりあえず、この辺に人を石化させる何かが居るといった感じではないかな?』

『はい。そういった存在も感知出来ません』

『そうか。後は、これは何をしていたところだったのだろうか?』

 何かに興奮している男性と、それを心配そうに見ている女性。見ようによっては、男性が誰かを襲おうとしている現場に出くわしてしまった女性にも見えなくはない。

 男性の石像の前には何かが部屋の一部を破壊した痕跡はあるが、残っているのはそれぐらいか。

 完全には再現されていないのかもしれないが、部屋の様子は牢屋のようで、その部屋も含めて石化した瞬間が再現されているのであれば、そこから少しは推測出来る事はあるだろう。

(そうだな……この石像の二人は研究員か何かのようにも見えるから、ここに閉じ込めておいたか保管していた何かを実験に使用して石化したといったところかもしれない。しかも男性の方が興奮している様子から、何らかの進展があった結果なのかも? もしもそうならば、この破壊の跡はその実験に使用された何かが起こしたという事だろうが……それが成功の結果なのか失敗の結果なのかは定かではないが、ここからはそれぐらいしか分からないな。それにしても、ここは牢屋っぽいのに拘束具のような物は発見出来なかったな。一緒に破壊されたか、そんな物は必要無いモノだったのか。もしくは俺の予想は全くの的外れといったところか)

 ヒヅキは自分なりの考えを思い浮かべてみるも、それも限界がある。現状から全てをつまびらかにするというのは無理があった。

 それでも、とりあえず近くに害をなす存在が居ないという事が分かっただけでも十分だろう。警戒を怠るつもりはないが。未知の存在というのは、それだけで脅威であるのだから。

 男性の方の石像を調べ終えたヒヅキ達は、次は廊下の女性の石像を調べていく。

『何か特徴的というか、何をしていたのか分かるような物でも所持していてくれたらいいのだが』

 何か文字が書かれた物なら首から掛けていたが、読めない文字だったので何と書いてあるかは分からなかった。それでも、女性の顔も一緒に載っていたので、おそらく身分証なのだろう。男性も首に似たような物を掛けていたが、その先は服の中に入っていたので確かめられなかったのだ。

 他には何かないかと思って調べてみるが、目を引くようなものはない。

 石化しているので、表面上に在るものしか確認出来ないのが残念ではある。どうも衣嚢の中に何か入れているらしく、服の腰元の辺りが膨らんでいるのだ。

 試しにヒヅキは服に触れてみるが、そう見える石というだけなので、何をしても髪の毛1本とて動かない。

 ヒヅキはしょうがないかと息を吐き出すと、他に調べるところもなさそうなので、そろそろ先へと進む事にしたのだった。

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