仕事13
到着した宿舎は、三階建ての見るからにしっかりとした造りの横に長い建物だった。
全員がついてきた事を一度確認すると、綺麗な鎧の男達の先導で中へと通される。
建物内の部屋は、一人用のベッド一つで部屋の大半が占められるほどに狭かったが、代わりに部屋数はかなりの数があり、一人一部屋割り当てられた。
まだ昼頃と早い時間ではあったが、ヒヅキは自分に宛てられた部屋のベッドの上で横になる。
「…………」
別に特別眠い訳ではないので、直ぐには眠りに落ちはしなかったが、徐々に意識が沈みはじめた時、部屋の扉が数度強く叩かれた。
「はい? どなたですか?」
ヒヅキは来訪者に扉越しに誰何する。
「シラユリだよー。ヒヅッキーお昼ご飯だってー」
起き上がったヒヅキが扉を開くと、そこには確かにシラユリが立っていた。
「お昼ご飯ですか?」
「うん。軽いやつらしいけど、砦側が用意してくれたらしいよー」
「それは……なんともはや、豪気なことで」
到着時に軽食と新鮮な果物を用意し、まだ明るいのにわざわざ宿舎まで手配して、更に昼食まで用意するとは、一介の仕事人相手にはあまりに丁寧な対応だった。それこそ、何か裏があるのではないかと勘繰りたくなるほどに。
「だよねー。それに何より、ここは料理が美味しいよねー」
嬉しそうに笑うシラユリに連れられて、ヒヅキは軽い昼食が用意されているという場所へとやってきていた。
そこは屋外の開けた場所であった。
まるで炊き出しのように料理が用意され、それを各自が食器を手に、料理をもらいに行く。
ヒヅキもシラユリと共に食器を手に流れに乗って料理を取りに行く。
メニューはパンと、肉と野菜の入った黄金色のスープであった。
「端っこの屑じゃないちゃんとした肉に新鮮な野菜が入ったスープか、ここは食材に恵まれてるのかな?」
用意されていた席の一つに腰を下ろすと、ヒヅキは机の上に食器を置きながらシラユリに問い掛けた。
「ねー。どれも食材が新鮮だよねー。あと豪華で美味しいー!」
「この付近って小さな村があるだけでしたよね?」
「そだねー」
「……砦で農業でもしてるんですかね?」
「分かんないねー。もしかしたらその村が豊作だったのかもねー」
料理を口にしながらシラユリは答える。
「まぁ美味しい料理が食べれて嬉しいですけれど」
パンをスープに浸しながら、ヒヅキも料理を口に運ぶ。
パンは固いだけでそこまで代わり映えはしないものの、スープが少し濃いめの為にパンによく合った。
「そだねー。細かい事はこの際いいよー」
料理の美味しさに、シラユリは終始にこやかな笑みを浮かべている。
「そうですね」
ヒヅキは頷きながらも、心配のし過ぎかと思い直す。しかし、どうしても不安が拭いきれなかった。