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神域への道72

 部屋の中を調べても他に何も発見出来なかったので、ヒヅキは本だけ回収して先へと進む事にする。

 廊下に出ると、次の部屋を目指して進む。そろそろ地下1階も調べ終わるだろうとヒヅキは考えているが、廊下は相変わらず先が霞んで見えている。この辺りは廊下の始端と終端が繋がっているので、廊下を移動するだけならば永遠と歩き続ける事になる。

 なので、横道は無いかと探していく。横道があれば、そこは昇降機へと繋がっている可能性が高いはずだから。

 そんな事を考えながら先の様子に目を向けていると、次の部屋に到着する。

 その部屋には実験器具が幾つか置かれている。地上ではほとんどなかった事だが、地下ではこれも珍しくはない。

 とりあえず安全を確認してから部屋の中に入る。置かれている実験器具の数は少ないが、それも別段おかしな事ではなかった。

『少し使用した痕跡が残っているね。洗浄が足りなかったのかな?』

 ヒヅキは置かれていた実験器具のひとつを手に取る。それは透明な容器で、他の部屋でもよく見かけた。

 その手にしている実験器具には、内部に僅かな汚れが付着していた。それは大した事ではないのだけれども、今まで見て来た同種の実験器具は奇麗なものだったので、余計に目を引いたのだろう。

 他に何か変わったところはないかと、ヒヅキは透明な容器を元の場所に戻して調べてみる。そうすると、実験器具が置かれていた机の裏側に何かが彫られているのを見つける。

(ん~…………文字っぽい?)

 それを眺めながら思案したヒヅキはそう思った。それと共に、本に書かれていた文字に何処となく形が似ているような気がしてくる。多分探せば同じ形の文字を見つける事が出来るだろう。もっとも、ヒヅキが持ち出した本は既に翻訳された本なので、その場では調べようがないが。

 ヒヅキは彫られている文字を指先でなぞってみるも、ここでも今までと同じように凹凸が無く、ツルツルとした表面を指先が滑るだけ。どうやらこれも、何処かから机を写し取った際に文字も一緒に再現されただけのようだ。どうやらその際に、本来その物に存在していない文字や落書きなどは模様として再現される感じらしい。

(という事は、これはこの机が在った場所で掘られた文字という事になる。読めないので内容が分からないから、今までの物と何か関係があるのかどうかも分からないな。少なくとも文字の形は本の文字と似ているので、同じぐらいの時代の品物なのかもしれない)

 それ以上は分からないと思ったヒヅキは、覗いていた机の下から顔を戻す。やはり文字を学ばなければいけないのだろうかと思うも、その為の取っ掛かりとなる物がほとんど無い。本も意図せず翻訳されたので、その前の文字の形など覚えていなかった。

 他には何かないかと調べてみたが、目を引くようなモノは何も無い。

『そういえば、この実験器具は使えるのだろうか?』

 文字が模様になっているように、置かれている実験器具も見た目だけで実用には適していないという可能性も在る。全て同じとは限らないが、とりあえずヒヅキは目の前の実験器具を試しに使ってみる事にした。

『何かあったかな……』

 もっとも、実験器具を使うにしても、何か実験する物がある訳でもない。ヒヅキは背嚢を探りながら、何か適当なものはないかと調べてみる。そうすると。

『これは使えないだろうか?』

 少し前に畑の部屋で大量に収穫出来た動く植物の一部をヒヅキは持ち帰っていた。その植物を背嚢から取り出したヒヅキは、それを幾つか机の上に置きながらフォルトゥナに問い掛けてみた。

 机に置かれた植物を眺めながら思案したフォルトゥナは、とりあえず何かしら実験器具を試せればそれでいいのだろうと判断して答える。

『刻んで水で煮込んでみてはいかがでしょうか? 丁度手頃な透明な容器も在るようですし』

『なるほど。それが簡単かもしれないね』

 フォルトゥナの意見に頷いたヒヅキは、取り出した植物の中にあった小さめの破片を空いている場所に置いて、早速短剣で切り刻んでいくのだった。

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