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神域への道71

 ヒヅキは読める文字に変わった本に目を落とす。それが正しく訳されているかは分からないが、それを気にしていてもしょうがない。

「………………」

 どうやらその本は、本というよりも書き留めたものを纏めて本の形に整えただけの物のようだった。それを子孫がやったのか、それとも研究者がやったのかはしらないが、本人が読んだら悶絶しそうな私的な内容も含まれていたので、少なくとも本人が纏めた訳ではないのだろう。

 その内容も、その日の天気や食事の話から仕事や人間関係の愚痴、調べ物をした内容の纏めに当時の行政の話、それに自作の詩集まで多岐にわたる。

 どうやらこの筆者は歴史家か何かのようで、歴史に興味があるらしい。私的な部分を除けば、歴史の話やその考察が多く書かれていた。

 興味深い話も多いが、その中に遥か昔の話としてこんなものがあった。

【昔に二柱の神が在った。二柱の神は争い、片方が消滅した。残った神は新たに三柱の神を生み出し、争いの傷を癒すために三柱の神に後を託して眠りについた。しかし三柱の神は仲が悪く諍いばかり。そのせいで起こされた神の怒りに触れて、三柱の神は滅ぼされてしまった】

 というもの。筆者の考察として、古の統一王の死後に子孫が争い、結局内より出でた第三勢力に滅ぼされた話ではないかと書かれていた。

 しかし、ヒヅキにはこれが例え話とは思えなかった。勿論何か明確な根拠がある訳ではないし、実際に起きた事がそのまま記されているとは思っていない。

 それでも、下地には何かしらの事実を基にしているのではないかと思えてしょうがなかった。

(最後の三柱の神を滅ぼした神は、今代の神という可能性があるし。しかしそうなると、最初の眠りについた神というのは? それと最後の神が眠りについた神と同じ神とはどうも思えないんだよな。そしてそうなると、始めの方で争って敗れた神というのも気になってくる)

 そもそも神とは何かだが、これについては最も力ある存在というのが答えとなる。しかし歴史で言えば、書かれた時代の権力者の先祖という場合もあった。筆者は後者の場合で考えたのだろう。

 ヒヅキの場合は、本当の意味での神という存在に触れているので、自然とそちらの方の可能性で考えてしまうらしい。

(この記述がどこまで事実を記しているかは分からないが、そもそも神々が争って決着がつくのだろうか?)

 今までの旅の中で蓄えられた知識の中には、複数の神が存在する場合は、その神々は横並びの力の持ち主というものがあったはずだ。であれば、それで決着がつくかは疑わしい。策謀を巡らせればその可能性は在るが、しかし三柱の神は、散々争っても結局決着はつかなかったという。

 では、二柱の神では何故決着がついたのか。それに、残った神は傷を癒すために眠りについたとあるが、その前に神を三柱も生み出している。なので、その戦いはそれだけの余力を残しての勝利という事になるだろう。

(当時を知る事は出来ないからな)

 もしかしたら、今まで読めなかった本の中にそういった話が記載されていたかもしれないが、こればかりは読めなかったのだから仕方がない。

(他に神話のような話は出てこないからな……)

 どれだけ読み進めてみても、不自然なまでにそれ以外の神々の記述は存在しない。国の歴史などは、民の生活水準から代々の王の政策や性格についてまで細かく記されているというのに。

 もしかしたら筆者は神話の時代には興味が無かったのかもしれない。その細かな記述を粗方読んだヒヅキはそう思った。

 それに、やはり日記のような書き留めを纏めただけなので、そこまで長々と書かれていない。書かれている内容も、ほとんどが歴史年表のように簡潔に纏めた出来事を羅列してあるだけ。おそらくそれを基に別に本を書いていたのかもしれない。

 ヒヅキは読み終わると本をフォルトゥナに渡し、他に本は無いかと部屋の中を調べてみる。しかし、拾った本以外に何かが落ちているという事は無かった。隠し部屋や隠し通路も存在しない。

 途中から早々に本を読み終えたフォルトゥナも探索に加わったが、結果は同じだった。

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