帰宅、そして森へ
ミーコの家を出たヒヅキは荷車を預けていた駅舎へと移動すると、荷車を受け取ってからチーカイの内と外とを隔てている門を潜った。
その後はひたすらカイルの村を目指してのんびりとした歩みで進むと、日が落ちる少し前には無事にカイルの村に到着したのだった。
ヒヅキが家に帰った時にはすでにヤッシュとアートは帰宅しており、もう少しで夕食を終えるところであった。
ヒヅキは先に食べ終えていたヤッシュに露店の売上金を渡すと、自分の席であるヤッシュの正面の椅子に腰掛けてから、チーカイでの商売の様子やヤッシュの野菜の評判などを中心に、チーカイでの出来事を簡単に報告した。
それを聞き終えたヤッシュは、労いの言葉をヒヅキに掛けた。
そのころには夕食は終わり、ヤトは片付けを、アートは自室へと戻っていた。
ヒヅキはヤッシュに明日にもう一度外に出ることを伝えた後に、目的地が森であることと、その目的を話した。
それにヤッシュは驚いた表情を見せはしたが、幸い理解を示してくれた。
こうして、ヒヅキは翌日にまたカイルの村を出ることが決まると、翌日に備えてちょっとした準備を整えてから、早々と眠りについたのだった。
そして、翌日。
相変わらず辺りがうっすら明るくなりだした頃に目覚めたヒヅキだったが、それでもこの家の住人はそれ以上、もしくはほとんど同じころに目覚めるので、特に気を遣うでもなく朝の日課を一通り行ってしっかりと目を覚ますと、ヤトが用意していた朝食を四人で食べてから、それぞれ仕事に移るのだった。
カイルの村からカムヒの森へと近づくにつれ、冒険者の姿をよく見かけるようになってくる。
大勢というほどではなかったが、十分な戦力となる数組の冒険者の姿を見ながら、ヒヅキは「これだけ居てまだ討伐しきれないのか」と、内心で少し驚愕するも、足取りは一切鈍ることはなかった。
そして、カイルの村を出てから一刻ほどが過ぎたころ、ヒヅキはとうとうカムヒの森に着いたのだった。