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神域への道61

 それからもよく分からない器具が置かれた部屋を幾つか見て回った後、ヒヅキは英雄達と合流する。

 英雄達が居た部屋は、他の部屋とは様相の異なる部屋のようで、それの原因が英雄達なのかは知らないが、その部屋は簡潔に言えば汚い部屋であった。といっても、3階で見かけたようなゴミ箱のような部屋みたいにゴミだらけという訳ではなく、部屋中が変な色の染みに染まっていたのだ。

 今までも部屋に染みが付いている部屋は何度か見掛けている。血の跡のような赤黒い染みから、絵でも描いていて色がはみ出たかのような染みなどだ。しかし、その部屋の染みは明るかった。まるで何色もの蛍光塗料をぶちまけたかのようなそれらは、配色のせいか見ていると酔ったような気持ち悪さを感じる。

 そんな部屋には、実験直後のような汚れた実験器具が幾つも置かれている。今まで新品のような器具か、洗浄済みらしい器具ばかりだっただけに、それもまた他の部屋とは異なっていた。

 もしもそれらが最初からそうだったのならば、何故この部屋だけそうなのだろうかとヒヅキは考えてしまう。それとも、今後はこういった部屋が増えていくのだろうか。

 英雄達の方は、フォルトゥナの報告通りに何かを調べているようだ。だが、一人が置いてある実験器具を使って何かをしているようだった。

 周囲を警戒しながら近づいてみれば、その者は何かを実験している最中のように見える。発光している緑色の液体が入った透明な容器を軽く揺するように振って、何かを確かめている様子。

 目の前の机の上には、使用された器具と素材の残りと思われる物が散乱していた。そして、相手の数歩圏内に近づくと、急に目に刺さるような刺激臭がしてくる。少し離れるとそうでもないので、突然の変化にヒヅキは思わず飛び退いてしまった。

(あんな中でよく実験が出来るな)

 涙目になりながら、ヒヅキは実験している英雄を凝視する。見た目には何かしら防護しているようには見えないし、魔法的または魔導的な防護も感じられない。つまりは素のままで実験を行っているということだが、だというのに英雄に刺激が効いている様子は無い。

(慣れ……るとも思えないが。少し刺激を感じただけで未だに涙が出てくるし、鼻水も出てくる。なんとか視界を確保するだけでいっぱいいっぱいだ)

 水の魔法で水を生成すると、ヒヅキはそれで顔を洗う。空気中の水分は気分的に使用したくはなかったので、魔力を水に変換するという、面倒で空気中の水分を集めるよりも高度な方法で水を用意した。その分使用する魔力量は格段に増えたが、精製出来た水の量は大幅に減っている。それでも顔を洗う程度は問題なかったので十分だが。

 そうして顔を洗ったヒヅキだが、水で目を洗ったので、先程とは違った意味で目が痛くなる。それでも先程までの刺すような痛みとは違い、こちらは目を瞑っていれば直ぐに治るだろう。

 背嚢から適当に取り出した布で顔の水を拭いた後、目の痛みが引いたところで改めて周囲を見回す。忘れずに風の結界も展開させた。

 実験を行っている英雄は、今度は別の液体を精製する作業に入ったらしい。先程確かめていた緑色の液体を机に置いたまま、今度は薄桃色の怪しげな液体を濾している様子が窺える。

 他の英雄達は、部屋中に散って色々と調べているようだ。使用されていない実験器具を調べたり、壁や床の染みを調べたり。

 黙々と手元の作業に集中している英雄達の様子に、見ているだけという状況がいたたまれなくなったヒヅキは、フォルトゥナと共に廊下に出た。

『結局、何を調べているのか分からなかったな』

『はい。あの部屋は何か特別なのかもしれませんね』

『それは他の部屋を見ていけば分かるかもね』

『そうですね』

 少し先に進んで風の結界を解いた後、1度深呼吸をしたヒヅキは、歩きながらフォルトゥナとそんな会話を交わした。

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