神域への道60
今回は1階移動するだけではないので、昇降機に少し長めに乗る。そうして到着した地下1階は、見た目は地上3階と変わりなかった。
ヒヅキ達は昇降機から降りて廊下を進む。そして、左右に延々と続く廊下の前に到着した。
(建物の構造はどの階も同じなんだな。ただ、地下だからか外の景色が見られないだけで)
地上階には在った外側の窓が、地下階には存在しない。その代り、窓と同じ形をした照明が取り付けられている。なので、明るさはほぼ地上階と同じぐらいであった。
(明るさはあんまり変わらないのに、こちらの方が目が痛いな)
太陽光かそうでないかの違いなのか、明るさとは別に、目に刺さるような刺激は地下の明かりの方が強かった。それも光源である壁を背にすればある程度収まるが、それでは移動がしにくい。かといって普通に歩くと、目の端に光源が映って目が痛くなってくる。
(まぁ、目が潰れるほどという訳ではないが)
もっとも、それで直ぐにどうにかなるほどではなく、長い時間目にしていると目が疲れてくるぐらいではあるので、適度に休憩を取れば問題なさそうではあった。
ヒヅキ達は廊下を適当な方向に曲がって進むと、外側の壁へとやや顔をそむけながら先へと進む。
『そう言えば、英雄達の方はどう?』
『この階には10数名は居るようです。ただ、目的の人物は見当たりませんが』
『ふむ。女性とクロスは地下2階に居るのかな?』
『かもしれません』
地下に関してはまだ全容が分かっていないので、ただフォルトゥナの感知範囲外なだけという可能性はあるが、もしかしたら二人は地下2階にも居ない可能性がここで浮上する。
(先への道を見つけて進んでいるとか、実は地下3階が存在するとか考えられるからな。まぁ、普通に感知魔法で発見されないようにしているという可能性が最も高いとは思うが)
フォルトゥナの感知魔法で発見出来ない可能性について考察したヒヅキだが、とりあえず地下を探索してから考える事にした。今考えたところで直ぐに合流する訳ではないのだから。
(それに、今は光の魔法を魔導に変換する作業が忙しいからな)
フォルトゥナの報告を聞いた後、ヒヅキは今気にする事ではないと頭の片隅にその事を追いやる。
今はそんな事を考えるよりも、光魔法の変換作業の方が忙しい。これは今代の神との戦いで必要になってくるだろうから、ヒヅキの中では何よりも優先される事柄だった。
それから始まった地下の探索だが、地下の探索も地上でのそれと大して違いはなかった。違いらしい部分と言えば、空き部屋の数が地上よりは少ない事ぐらい。
といっても、地下の探索は英雄達が重点的に行っているので、何かの器具や素材や設備などが置いてあっても、めぼしい物は何も見つからない。
(調べる前に新しく変化した部屋以外は空き部屋と変わらないな)
その結果に、ヒヅキはそう思う。ただ、新しく変化した部屋かどうかは見ただけでは分からないので、結局は調べなければならないのだが。
変換作業の方はやや進展があったが、まだ試験運用の段階にも至れていない。道は中々険しいが、一応の進展が見られたのでまだ何とかなるだろう。
その後も進んでは部屋を確認して、また先に進むというのを繰り返す。部屋の調査に掛かる時間が増えたので、地上の時よりも進みは遅い。
それでも少しずつ進んでいると、フォルトゥナから少し先に英雄達が居る事をヒヅキは告げられた。
その報告にヒヅキは英雄達の様子をフォルトゥナに尋ねてみる。おかしな行動をしているのならば、出来れば避けて通りたいところ。
『長い事ひとつの部屋から出てこないので、おそらく部屋の中を重点的に調べているのではないかと』
『なるほど。ありがとう』
フォルトゥナの言葉に、ヒヅキは内心でホッとしつつ礼を告げると、そのまま前進を続ける事にした。




