神域への道58
魔力の回復速度というのは個人差が大きい。ヒヅキとフォルトゥナの場合はそれが結構早いので、直ぐに魔力は回復しきってしまった。
(最後に魔力水を飲まなければよかったかもしれない)
ゴミ山の撤去後、ヒヅキ達は移動前の休憩中に魔力水を飲んでいたので、魔力の回復速度が余計に早かったのだろう。幸いと言うか、それまでに魔力水を何度も飲んでいたので、あまり量が飲めなかったのは結果的にはよかったのかもしれないが。
(それでも僅かな時間遅らせただけ。まぁ、それで魔素の流れについては大分解ったからいいけれど)
すっかり魔力が回復してしまった後でも、ヒヅキはその前よりもずっとはっきりと魔素の存在を感じられた。それにより、魔導の効率と安定性がグッと上昇していた。
それを実感出来たヒヅキは、更に上を目指して精進していく。今のままでも戦えるのかもしれないが、それでも最低限という言葉が頭に付く。それでは足手まといと何ら変わらないだろう。
女性や英雄達の背が遠いのを感じながらも、今であれば光の魔法を魔導に落とし込めるのではないかとヒヅキは期待する。
(出来るだけ安全性が高い方がいいから、やはり試すのは光の環だろうな)
ヒヅキが使用出来る光の魔法は、光の剣・光球・光の環の3つ。治癒は光の魔法というには曖昧な部分があるので区分が難しい。とりあえず半光の魔法とでも言えばいいか。
まぁとにかく、その中で最も危険なのは光球だろう。光球は魔砲の弾でもある、というかそちらが本来の用途のようなので、衝撃を与えると周囲を巻き込んで盛大に爆発してしまう。出力を抑えても試すには危険なので、魔導の実験に使用するには適さない。
光の剣は剣身の部分に触れなければ大丈夫だが、こちらは出力次第で大きさや長さが変化するので、魔導の実験で誤って大量に魔素を送り込んでしまったとしたら大変な事になってしまうだろう。なので、こちらを試すのは実験が上手くいって、扱いが上達してから。
という訳で、最後に残ったのが光の環となる。こちらは魔砲を使用する際の砲身で、砲身内を通過するモノへの補助が目的なので、光の環単体では危険性は極めて低い。しかも光の環は術者以外には見えないので、実験にも適している。
そういう訳で、ヒヅキは魔素の扱いが上達したので、光の魔法を魔導で再現する実験を改めて試みていく。
今までも幾つもの魔法を魔導として再構成しているので、その経験を活かして、光の魔法を魔導へと変換する作業を行っていく。
(やはり光の魔法は難しい……)
ヒヅキは光の魔法を魔導に変換する作業に集中しながらも、他の魔法とは勝手が違う事に苦戦していた。
やはり光の魔法は他の魔法と比べて出力が高すぎる。それでいて制御が難しく、分解して光の魔法の構成を改めて確かめたヒヅキは、自分の事ながらに、よくこれを制御出来ているなと、思わず自身の魔法制御能力に感心してしまったほど。
それほどまでに扱いが難しい魔法が光の魔法であるのだが、折角の機会なのにこれをただ変換するだけというのも芸がない。
(いや、変に弄って発動しなかったり別物になっても困るな……しかし、このままというのも難しそうだ。おそらく魔導に変換しても制御は可能だとは思うが、まだ何とも言えないからな……)
ヒヅキはどうしたものかと思案する。このまま変に弄って機能しなくなったり、別物になっても困るが、そのまま変換しただけでは制御出来るのかという不安があった。
(うーむ。まぁ、1度普通に変換して、失敗したり不満があれば、その都度調整すればいいか)
変換出来るのであれば、後で調整する事も可能だろう。そう考えれば光の魔法でも出来そうではあるが、ヒヅキは既にほぼ完璧に制御出来ているので、その必要性を感じなかった。
そういう訳で、まずは普通に光の魔法を魔導に変換していく。といっても、残念ながら色々と考えたところで、その変換作業が難航しているのだが。




