神域への道56
中に何が在るのか分からないので、ゴミの山を一気に消すのは躊躇われた。なので、フォルトゥナは見えている範囲で表面を少しずつ削っていくようにゴミを消していく。
様々なモノが混じっていて見た目には何のゴミか分からないゴミの山も、消してしまえば関係ない。
(もしも何か重要そうなモノが消えたとしても、これで消せるようならきっと重要ではなかったのだろう)
ヒヅキはそう開き直りながら作業を眺める。ヒヅキ達にとって重要なモノとなると限られてくる。現状では今代の神に対する何かという事だろう。であれば、多少手荒に扱っても問題ない。情報の場合は諦めるしかないだろうが。
それでも少しずつ表面を削っていくように消していっているので、一応の配慮はしている。
通常であれば、ゴミの山を掘り起こすには事前にそれ相応の準備が必要だろう。今回は突然の事で何も準備をしていないので、削っていく事にしただけ。
(強風で吹き飛ばすにしても、金属なんかの重い物は難しいからな)
フォルトゥナとの話し合いの時を思い出したヒヅキだが、ヒヅキの手札ではそれぐらいしか方法が無かった。焼き払ったり水で洗い流すのは流石に論外だろう。まして爆発させるなど、規模も大きくなるので選択肢にも上らない。
そういう訳で、ヒヅキでは強風で吹き飛ばすぐらいしか案が思いつかなかったが、それも結構厳しい内容だった。なので、フォルトゥナの消滅魔法で表面を削るようにして消していくという方法ぐらいがちょうどよかったのだ。
そうして作業を始めたはいいが、確認してから僅かに削るという作業の繰り返しは、かなり時間が掛かった。確認作業は基本的に目視と感知魔法だけだが、それでも結構な時間と手間が掛かる。そして削るのは、そうして確認した範囲だけ。
それにゴミの山は大きいので、ちまちま削っていくだけでは中々減らない。それに加えて、削る場所もしっかり考えて削らなければ、ゴミの山が崩壊してしまうかもしれなかった。
『はい、魔力水』
『ありがとうございます』
『もう少ししたら少し休もうか』
『はい』
フォルトゥナの消滅魔法は、ヒヅキの光魔法に比べれば燃費はいい。しかし、それでも結構な量の魔力を消耗するので、途中途中で魔力水で魔力を回復する必要があった。しかしそれも、魔力水が飲める範囲でしかない。飲める量は魔力水も普通の水とそう変わらない。
全体の形を見ながら、フォルトゥナはあっちこっち行き来して表面を削っていく。その間ヒヅキは、移動しやすいように足下のゴミを掃除していた。
掃除といっても、風で吹き飛ばしたり、周囲の安全に配慮しながら焼いたりしただけだが。途中でヒヅキは何度か廊下へと流してやろうかと考えたが、なんとかその考えを抑えて黙々とゴミを処理していった。
(まさか光球にこんな使い方があったとは……)
ある程度掃除が終わったところで、疲れたヒヅキが戯れに行ってみた実験で新しい発見があった。それは、光球にそっと物体を触れさせると、その物体を焼却するという機能。
(一定以上の衝撃さえ与えなければ、焼却炉代わりになるんだな)
例えば、光球の上に紙をそっと載せてみるとか、光球を動かしてゴミに優しく触れさせてみるとかすると、触れた部分を光球内に取り込んで、高温で焼き払ってしまうのだ。それも灰も残さぬほどに徹底的に。
それを発見してからの掃除は早かった。可能な限り平べったく変形させて面積を増やした光球を、ゴミの上にそっと被せるようにしてゆっくりと下ろしていくだけ。ただそれだけで、光球が触れたゴミは悉くが消滅していくのだから。ただ、床や壁はそれでも効果が無かったが。
(むしろ楽と言えば楽だったか)
光球が床に触れても問題なかったので、ギリギリで止める必要が無くなった。勿論、床に光球を押しつけるようにしては爆発しかねないので、その辺りは十分注意したが、それでも大分楽になったのは事実だった。これで掃除した場所の床が悉く消失するという事態は免れたのだから。
そうしてフォルトゥナが動きやすいように掃除をして、かなり床が見えるようになったところで、フォルトゥナに限界が来たので休憩を取る。
フォルトゥナが休んでいる間、ヒヅキは水筒に魔力水を補充したり、魔導の練習をしたりして時間を潰す。フォルトゥナが休んでいる間にも掃除を続けてしまうと、フォルトゥナが変に気を遣って落ち着かなくなってしまうので、休憩中は一緒に休憩するようにしていた。
そうして合間合間に休憩を挿みながら、フォルトゥナはゴミの山を処理していく。
その間に床の掃除を終えたヒヅキは、ゴミ山の端の方で光球を使ってフォルトゥナと同じ事が出来ないかと実験を行ってみた。




