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神域への道55

 それから何も無い部屋を幾つか確認した後、今度はゴミ箱の中のような部屋が現れる。

『幸い臭いはしないが、床一面ゴミだらけだな。しかもところどころに生ゴミらしき物も確認出来るし……』

 石や土や木や紙など、とにかく雑多に床に落ちている汚れたそれらは、誰がどう見てもゴミであった。

 何処かの廃墟を崩して部屋に詰め込んだようなそれらに混じって、野菜や果物の食べ残しと思われる物体も散乱している。中には、ある程度の大きさに切り分けられた生肉が贓物らしきものと一緒に落ちていたりするので、臭いがしないはずなのに、部屋の中を見ているだけで悪臭が漂ってきそう気がしてきた。

『何の部屋なんだ? ここは』

 そんな部屋だけに、入るのに躊躇してしまう。ゴミ捨て場のような場所なので、ヒヅキは外から確認するだけでいいような気にもなってくる。

 しかしそういう訳にもいくまい。奥の方にはゴミの山が確認出来るので、その中に何かが埋もれている可能性も在る。それに、わざわざゴミ捨て場のような部屋がヒヅキ達の前に現れたのも気になった。

『確か英雄達から聞いた話の中にこんな部屋は無かったよね?』

『はい。ごんな場所でしたら記憶にも残っているでしょうから、話の中に出なかったという事は、英雄達には未発見の場所だという事になるのでしょう』

『うーむ。そうなるよね……しょうがない、中に入ってみるか』

 ヒヅキは風の結界を少し強めに発動させると、思い切って部屋の中に入る。といっても、何があるか分からないので警戒は怠らないが。

 部屋に入るも、入り口付近はそこまで散らかってはいなかった。奥に進むほどにゴミの量が増えていき、部屋の奥の方は壁さえ見えないほどにゴミの山がうず高く形成されている。風の結界のおかげか、部屋の中に入っても臭いはしなかった。かといって、風の結界を解いて本当に臭いがしないのか確認する気はヒヅキには全く無い。

 ヒヅキはフォルトゥナの方に視線を向けるも、フォルトゥナも自前で風の結界を展開したようで、臭いについては分からなかった。別に知りたくも無いのでそれで問題ないが。

 足下のゴミへと視線を向けたヒヅキは、屈んで近くで見てみる。今までの経験から、ゴミはただの映像という可能性も在った。もっとも、おそらく映像ではなく何処かから模造した物だろうが。

「………………」

 足下に落ちていたのは、泥の中から取り出したような汚れた木片。乾いてカピカピになっている泥が全体に纏わりついていて、泥の筋肉と木の骨のようにも思えてくる。

 何となく触る気がしなかったので、背嚢から短剣を取り出して剣先でつついてみる。

『実体はあるんだな』

 ついでに泥の表面を剣先で削ってみると、それで細い線が泥の表面に引かれた。

『まるで本物のようだが、多分これも造られた物なんだろうね』

『おそらくは』

 だからといって、触りたいかと問われれば遠慮したいのだが。仮に似せているだけで全く汚れていないとしても、見た目が完全にゴミなので、触れなければならない時以外は積極的に触れようとは思えない。

 確認を終えた後は奥を目指して進む。足取りは重いが、慎重に進んでいく。

 段々と足の踏み場が無くなってきたので、ゴミの上を歩いて進んでいく。ゴミの形状は様々なうえに固定されている訳ではないので、これが案外難しかった。下手なゴミの上に足を置くと、こけたり滑りそうになったりするのだから。

 1歩ごとに大きくなるゴミの山。近くで見ると、見慣れないゴミも混ざっている事に気がつく。中には歯車などもあり、ゴミ捨て場にしても幅が広すぎるような気がした。

 見た限り動くモノは無い。そうしてよく見れば、液体状のゴミはほとんど無いのに気がつく。あっても重油のようなドロドロとしたモノで、それも固まっているのか、何かのゴミに付着してテカテカと黒光りしているだけ。

『このゴミ山の中を調べる為に掘り返した方がいいのだろうか?』

 ゴミ山の前に到着すると、ヒヅキはその威容に苦笑しながら、気乗りしない声音でそう零した。

『見た限りでは気になるモノもなさそうですから、もしもこの部屋に重要な何かが在るのでしたらそうなるかと』

 確実ではないが、誰も遭遇していない部屋なのでその可能性は在る。しかし、それも確実ではないので、このまま引き返しても問題ない可能性も十分あった。

 フォルトゥナの言葉に、ヒヅキはどうしようかと考える。しばらく考えたところで、律儀にゴミの山を掘り返す必要はないのではないかと思い至った。それこそ風系統辺りの魔法で吹き飛ばしても問題ないだろう。流石に火系統は止めておくが。

 ヒヅキがその辺りの事をフォルトゥナに相談してみたところ、フォルトゥナがゴミ山の表面を削るように消滅魔法を掛けてみる事になった。

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