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神域への道51

 崩壊が止まっているので、入り口が崩れる心配はあまりしなくてもいいのだろう。向こう側に到着したらどうなるかまでは分からないが、少なくとも通る分には問題はなさそうだった。

 改めてフォルトゥナと相談したヒヅキは、向こう側へと進んでみる事にした。もしかしたらこういった場所に先へと進む道が隠されているのかもしれないのだから。

 フォルトゥナの要望で、フォルトゥナを先頭にして壁に出来た入り口に入る。壁はかなり厚かったようで、5メートルほど進むと向こう側に到着した。

 奇麗に道になっていた通路を振り返った後、ヒヅキは周囲を見回す。壁の向こう側は奥行き数メートルほどで壁よりも幅が無い。それでも横幅は同じなので、結構広かった。

 廊下側の光が壁に遮られているからかやや薄暗いが、それでも空間自体が明るいのか、壁の端から端までは問題なく見通せる。

 ヒヅキは左右を見渡して端から端まで確認してみたが、気になるモノは何も無い。感知魔法でも何も感じられなかった。しかし、近づかなければ気づかないモノも在るかもしれないので、とりあえず端まで移動してみる事にした。

 そうしてヒヅキとフォルトゥナは、壁の向こうに在った空間の端まで移動していく。そして何も無ければ、反対側の端まで移動する。

『うーん……何も無い?』

『はい。何も発見出来ませんでした』

『ふむ。じゃあ、ここは無駄な空間という事か』

 そういう場所もあるだろう。そう思ったヒヅキは、調べ終えた端っこから壁に開いた入り口に戻ることにした。そうして戻ると。

「ッ!」

 通路までもう少しというところで、突然目の前に全身を黒髪で覆った例の人物が現れる。転移でもしてきたのか、いきなり目の前に現れたので、ヒヅキは少し驚いた。

 咄嗟にフォルトゥナが攻撃しようとしたが、ヒヅキはそれを止める。ヒヅキが驚いても構えなかったのは、相手からヒヅキ達への害意と言うか敵意というものを一切感じなかったから。もっとも、だからといって安全とは限らないので、いつでも迎撃出来る準備はしているが。

 その相手は、近くで見ても黒髪とその間に見える白い服しか確認出来ない。

 黒髪のその人物から感じる気配は禍々しいものなのだが、しかしそれは内側に渦巻いているだけで、外には一切そういったモノは漏らしていない。むしろ外に出ないように抑え込んでいるのが分かるからか、禍々しく感じながらもあまり警戒心を抱かなかった。

 とはいえそんな相手だ、善良な存在ではないだろう。ヒヅキの見立てでは、おそらくその禍々しいモノをぶつける相手は決まっているのではないか、というものであった。その相手以外に関しては、特に恨みはないのかもしれない。

「………………」

「………………」

 しばらく黙したまま対面するヒヅキと黒髪の人物。ヒヅキとしては、何故相手が現れたのか定かではないので、どう反応すればいいのか分からずに受け身なだけだが。

 そんな静かな時間を少し挿んだ後、黒髪の人物は髪の間からゾッとするほどに真っ白な手を差し出す。その手のひらには、手の白さにも負けないほどの真っ白な球体が載っていた。

「これは?」

 その球体を見ながらヒヅキは首を傾げると、黒髪の人物へとそう問い掛ける。答えてくれるとは思わなかったが、いきなりそんなものを出されても分かるはずがない。

「必ヨウ――なル」

 ヒヅキがそう思っていると、雑音混じりの声が返ってくる。雑音の中に音程の狂った声音という、酷く聞き取りにくい声ではあったが、確かにそう聞こえた。

「必要? 何にでしょうか?」

 返答があったので、続けてヒヅキは問い掛ける。説明してくれるというのであれば、その方がありがたい。

「あレと――の時――――ようニ」

 次第に雑音が酷くなり、言葉が認識出来なくなってくる。ヒヅキは上手く聞き取れなかったので、相手にもう1度同じ事を問うたが、今度は思わず顔を顰めてしまうほどの雑音しか耳に届かなかった。

 どうしたものかとヒヅキが困ると、黒髪の人物は更に手を伸ばして、白い球体をヒヅキに押しつけようとする。

 しかし、ヒヅキがそれを受け取っていいものかと悩むと、中々受け取らないヒヅキに業を煮やしたのか、黒髪の人物はヒヅキの足下にその白い球体を置くと消えていってしまった。

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