神域への道49
部屋に入る前にヒヅキは、フォルトゥナに何か感知出来たか確認を取ってみる。その結果はヒヅキと同じで、何も感知していないというものだった。
それを確かめたヒヅキは、慎重に部屋の中に入っていく。ヒヅキとフォルトゥナが揃って何も感知していないからといって、室内に何も無いとは限らないのだ。中にはヒヅキ達の感知を潜り抜ける存在だって居るのだから。
部屋の中に入ると、まずは床や天井を確認する。天井は高いので手が届かないが、それでも外からよりは詳細に観察出来る。
床の方は触ったり叩いてみたりして確かめてみるが、おかしなところは無い。同様に壁も確かめてみるが、おかしなところは発見出来なかった。もっとも、1番気になっているのは奥の壁なので、入り口付近の調査だけで結果を決めるのはまだ早い。
ヒヅキ達は部屋の中を移動しながら、途中途中の壁や床や天井を調べていく。部屋は広いので、それだけでも結構な労力がいる。
そうして部屋を調べていくと、とうとう奥の壁の前に到着する。見た目は他の壁と変わらない。
目の前で感知魔法を使用してみるが、何も感知出来ないのでただの壁でしかない。やはり倉庫のような変則的な部屋というだけなのだろうかと思いながら、ヒヅキは壁を軽く叩いてみる。そうすると、壁が僅かに震えたような気がした。
(おや?)
気のせいだと思えるぐらいに僅かな揺れではあったが、壁を叩いた当人であるヒヅキにはその震えが伝わっていた。
ヒヅキは僅かに目を細めると、次は壁を撫でるように触ってみる。ツルツルとした感触で、ひんやりとしていた。
しかし、今回は壁は何も反応を示さない。しょうがないのでもう1度壁を叩いてみたが、今度は何の反応もなかった。
(うーむ。気のせいだとは思えないし、最初のは突然で驚き、今度は分かっていたから問題なかったとか?)
ヒヅキの推測としては、目の前に在る壁は何かしらの意思があるのではないかと思っている。壁なのでただそこに在るだけの存在だが、建物内には色々なモノが在るので、そういう存在が居てもおかしくはないだろう。
さてではどうするかと、ヒヅキは思案する。別に何か害をなしている訳でもないし、ただ壁に擬態しているだけ。もしかしたらその奥に何かお宝でも隠しているのかもしれないが、感知魔法では壁の奥は何も無い。まぁ、感知魔法では壁もただの壁扱いなので、何も無いと断言は出来ないが。
もっとも手っ取り早いのは攻撃する事ではあるが、相手の能力や強さは未知数なので、それは最終手段だろう。
ではどうするかだが、とりあえず話し掛けてみようと思った。言葉が通じるのかとか、耳は何処にあるのかとか疑問はあるも、部屋の中にはヒヅキとフォルトゥナしか居ないのだ、幾ら広い部屋でも、大声を出せば伝わるだろうと思う事にした。
ヒヅキはまずはフォルトゥナにその旨を伝える。いきなり大声を出したら驚かせてしまうだろうから。
そうして事前に通知した後、ヒヅキは思いっきり息を吸って大きな声で壁に呼びかけてみた。そうすると、呼応するように目の前の壁が少しだけ震えたのが分かった。驚いただけなのかもしれないが、僅かに波打つ壁というのも珍しい。
(そんなに軟らかくもなかったのだがな)
触った時には普通の壁であったので、水面のようとまでは言わずとも、半固体を叩いたかのように僅かに波打つ様子は、十分軟らかそうであった。
大声を上げてから少し待つも、それ以上の反応はない。普通の壁ではないのは分かったが、もしかして生き物ではなかったのだろうかと、ヒヅキは改めて思案する。
壁を見渡してみても、変化らしい変化はない。このまま放置でも問題はないので、ヒヅキがこれからどうしようかと考えていると、フォルトゥナが壁に手を伸ばした。




