表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1383/1509

神域への道46

 時折奇妙な部屋は在るが、大半が何も無い部屋なのですっかりヒヅキは飽きてしまった。それでも調査は続けなければならないと思うも、1度飽きてしまうとしばらく気力が回復しそうになかった。

 そういう訳でヒヅキは、英雄達からかなり離れたところまで探索したところで休憩する事を決める。

 罠は無いのだろうが一応警戒しつつ何も無い部屋に入った後、ヒヅキは床に防水布を敷いて腰掛けると一息つく。

『相変わらず大半が何も無い部屋だな』

 ため息でも吐くようにそう零した後、ヒヅキは狭い防水布の上で下半身を外に投げるようにして、やや乱暴に横になる。

 そのまま目を瞑ってみると少し眠気を感じたので、フォルトゥナに少し寝る事を告げて、ヒヅキは意識を沈めていった。

 それから少し時が過ぎると、眠りから覚めたヒヅキが目を開ける。

「………………」

 目が覚めたヒヅキは、まだ動きの鈍い頭の中、視界に映った光景について思考を巡らせてみる。

(夢の続き、という可能性もあるだろうか?)

 先程まで何か夢を見ていたのかどうかすら覚えていないが、ぼんやりとした思考の中でも、視界に映るモノが普通ではないというのは分かる。

(休憩する前にしっかりと部屋の中を確認したと思ったのにな……。それにフォルトゥナも起きているはずなのだが?)

 段々と明瞭になってきた思考で現状を理解していくと、現状の危うさと共に、何故だか妙に納得も出来た。

(視界の端に映る、存在するけれど存在しない存在。そんなものが相手であれば、流石にフォルトゥナでも分が悪いか。害そうと思えばいつでも出来ただろうから、直接的な手段は用いないとは思うが……)

 視界の中には、天井に張り付くようにして浮かぶ長い黒髪の人物。その黒髪は重力など関係ないとでも言うように、天井と並行するように存在しながら、地面に立っている時と同様に頭部から足の方へと流れている。

 それはそれとして、そんな訳の分からない何かが天井に張り付くようにして浮かんでいるというのに、ヒヅキが冷静に現状を確認出来ているのは、もしかしたらそんな存在が初めてではないからかもしれない。

(観測者だったか? 興味が無かったのか、はたまた他と一緒に欠落したのか会話の内容はほとんど覚えていないものの、登場の仕方的にあれと同類だろうか?)

 天井が床か壁であるかのように現れた観測者の姿をなんとか思い出しながら、ヒヅキは視界に映る相手と比べてみる。

 ヒヅキはほとんど覚えていないが、ヒヅキは観測者と会話をしている。会話というほどの掛け合いでもなかったかもしれないが、それでも言葉を交わしたのは事実だ。

 ヒヅキがその時に会った観測者というのは、感情の薄い人形のような存在だった。観測者と名乗っているだけに、極力感情を排した存在なのかもしれない。

 では、今ヒヅキの視界に映っている相手はどうか。不気味な雰囲気を纏うその存在は、ほぼ全身が髪に隠れていて、髪以外はほとんど確認出来ない。髪の隙間から見える服は白色のようだが、髪以外に確認出来るのはそれぐらいか。

 感情といえるのかは分からないが、負の感情のような重く暗い雰囲気を纏っている気がした。それでいながら、それをヒヅキ達に向けているという感じはしない。何というか雰囲気はさておき、ただそこに居るだけの存在といった印象をヒヅキは抱いた。

(触れなければ問題なさそうだが)

 そう思うのだが、それが何なのかは気にはなる。見た目は髪がおそろしく長い人だ。おそらく幽霊とか怨念とかそういった類のモノではないかと推察出来るのだが、ここで問題なのは場所だろう。

(あの部屋に閉じ込められていた人物とか、拷問されていたであろう人物とか考えられるが、しかしあそこは元々の部屋を真似ただけの部屋。そこにそんな存在が現れるというのは疑問だが、そこまで再現したと言われれば納得してしまう。ここは今代の神のお膝元。腹の中も同義なのだろうから、何が起きても不思議ではないのだろう)

 そこまで考えれば、その存在が本物かどうかなどどうだっていい話かと、ヒヅキは思考を切り替える。

 とりあえず、知らんぷりして刺激しなければ害はなさそうなので、ここは調査している英雄達に任せて、ヒヅキは触れずに放置する事に決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ