神域への道45
本を回収して部屋も調べ終わると、廊下に出る。浮遊中は移動が遅いのが難点だが、戦闘中でもないのでそれは問題ない。
廊下に出ると、英雄達との距離が少し離れていた。浮遊していた時の移動や、部屋や本を調べたりが思ったよりも時間が掛かったらしい。
それでも少し離れた程度なのは、それだけ英雄達も移動速度が遅いから。何をしているのか分からないが、合流しやすいのはいい事だろう。
それから移動していくも、英雄達と合流するまでに変わった部屋は無く、無事に英雄達と合流出来た。英雄達は周辺を調べながらのんびり移動しているだけだったようだ。
合流した英雄達に話を聞いてみると、調査は順調という事だった。地上の建物部分に関しては全て調査が終わっていて、合流した英雄達は再確認も兼ねて見回っていただけらしい。ただ、時折部屋の中が変化しているらしいので、見回るのも重要なんだとか。それについてはヒヅキの推測が当たっていたようだ。
他にも、どうやらこの建物には誰かが居るらしく、調査した時や見回っている時にまれに誰かを見かけるらしい。だが、それが誰かは分からない。それどころか、容姿や身長や性別など何も分からないという。居るのは分かるのだが、視界に捉えようとすると居なくなっているらしい。
それを聞いたヒヅキは、あの不気味な部屋での事を思い出す。気のせいだと思っていたが、もしかしたらあれの事なのかもしれない。
英雄達はその人物も探しているらしいが、発見出来なかったら別にそれはそれでいいのだとか。ヒヅキがそれでいいのかと問うと、見回りの主題は部屋の変化を見つける事だからと返された。
今のところ、調査で次の場所への道は見つかっていないらしい。地下で見つからなければ、何処かに隠されているのだろうと考えられるとか。
女性が言うには、ここがハズレではないのは確からしい。もっとも、英雄達はその根拠までは知らなかったが。
(まぁ、ここは不思議がいっぱいだから、中継地点でもおかしくはないが)
白の世界から始まり、段々不可思議な現象が増えていっているので、ヒヅキがそう思ってもおかしくはないだろう。実際、ここは灰色の世界よりも不可思議な世界であるのだし。
(それにもしもハズレだとしても、色々と情報が得られそうだから、遠回りとまでは思わないだろう)
人造神の話だけでも、ヒヅキはかなりの収穫だと思っている。それの真偽まではまた別の話だろうが。
英雄達と移動しながら、ヒヅキは色々な話を聞けた。ついでに合流について尋ねてみると、連絡が来るとだけしか分からなかった。まぁ、女性やクロス辺りだとそれぐらい普通に出来そうだが。
そこで思い出したヒヅキは、クロスが今何処に居るのか尋ねてみた。しかし、英雄達はクロスの居場所を知らないらしい。では何をしているのかと尋ねると、調査だと返ってきた。という事は地下に居るのかとヒヅキは思ったが、クロスに関しては遊撃というか、好き勝手に建物内を調べているので、地下に居るとは限らないらしかった。
肝心な情報は不明のままだったが、色々と情報が得られたので、ヒヅキは英雄達に礼を言って先に進む事にする。やはり英雄達の移動速度は遅かったようだ。
道中の部屋を覗きながら、廊下を先へと進む。英雄達の姿が霞むほどに離れたが、道中では何も変わったモノはなかった。少し前に視界の端に映った誰かも見掛けないので、調査というよりもただの散歩である。
(英雄達がゆっくり進んでいたのも分かる気がする)
外の風景は荒れ地とはいえ、動かぬ太陽の光が燦燦と入ってくるので、気を抜くと何だかのんびりしたくなってくるものだ。ずっと太陽光が入ってきているというのに、適温なのもそれを後押ししてくるのだろう。
魔導の練習をしながらも、そろそろ少し休憩でもしようかなと、ヒヅキは変わらない光景にそう思った。




