神域への道43
結局、不気味というだけで調べても何も発見出来なかったので、ヒヅキ達は部屋を出る。もしかしたら、壁や床に書かれていた文字が読めれば何か分かったのかもしれないが、読めないのだからしょうがない。
部屋を出る時に耳元に僅かに風が通ったが、ただそれだけで何かを囁かれたような気分になる。やはり不気味な場所というのは、雰囲気のせいで不安な気分になるらしい。そのせいでありもしないモノを感じるのだろう。
廊下を歩くと、直ぐに次の部屋が見えてくる。覗いてみると、血にまみれた拷問器具が置かれていた。一部の床には人骨っぽい物が散らかっているが、先程の部屋と併せて何処からか持ってきたということだろうか。
ヒヅキは慎重に部屋の中に入ると、気になる場所から調べてみる。
部屋の中は薄汚れているので、それだけで部屋の中の空気が汚染されているような気分になってくる。しかし、壁に近づいて調べてみれば、先程の部屋同様に汚れを写しただけのようだ。触って見てもツルツルとした感触しかない。
拘束具が取り付けられた壁もあるが、拘束具は見た目は古そうなのだが、触れてみると真新しく感じられた。
拷問器具も同様で、一見すると血がしみ込み過ぎて落ちない汚れになっているようでいて、触ってみるとそれが新しい拷問器具に描かれた模様のようなものだと分かる。表面に描かれた訳ではないようで、触れてみても凹凸や感触の違いは感じられないのだが。
床に散らかる人骨らしき物を拾ってみると、よく出来た偽物なのだと分かる。素材は不明だが、実際の骨という訳ではない気がした。
それから、部屋の中を一通り調べてみる。全てが雰囲気だけといった感じだが、それでもかなりらしい感じなので、分かっていてもあまり長居したい場所でもないだろう。
わざわざ動かせる拷問器具をどけたりして調べてみても気になるものはない。結局ここにも何もなかったなとヒヅキが思った時に、視界の端に何か映ったような気がした。しかし、そちらに視線を向けても何もない。いや、拷問器具がひとつ置かれているだけだ。
「………………」
視界の端に映ったのは人のような気がしたが、その拷問器具を見間違えたのだろう。そう思いつつも少し気になったヒヅキ、その拷問器具を調べてみる。
もう1度先程調べたのと同じように調べた後、他に調べていない場所があるだろうかと首を傾げる。流石に壊さなければ分からないような場所に何か在るとは思えない。
とはいえ、そもそも調べ直しているのは見間違いから気になったというだけなので、何か在ると決まった訳ではない。なので、別にここで調査を終えてもよかった。
ただ、どうにも引っ掛かるような気がしたヒヅキは、拷問器具を眺めながら考える。
「………………ん?」
そうして何か調べていない場所はないかと首を捻っていると、血の跡のような場所に何か書かれていたような跡があるのが分かった。
しかし、それを調べてみても、何かが書かれていそうなのは分かっても、それは知らない文字なので読む事までは出来なかった。ただ、隣の部屋の文字と似ている気がしたので、やはり同じ場所から持ってきたのだろう。
そうして部屋を調べ終わったので、ヒヅキ達は部屋を出る。またしても微弱な風が吹いた気がしたが、珍しいことでもないのでヒヅキは気にしなかった。
それから廊下を進み隣の部屋を覗いてみるが、今度は何も無い部屋だった。何も無い部屋は何だか久しぶりな気がするのは、前の二つの部屋が濃かったからだろう。
それからも廊下を進みながら途中の部屋を覗いてみるも、しばらくは何も無い部屋が続いていた。英雄達との距離はまだ離れているらしく、合流はもう少し先だろう。
フォルトゥナの話では、英雄達も移動しているらしい。速度はそれ程ではないので、動きからして、前回と違ってのんびり探索している感じだとか。
それで前回の英雄達の様子を思い出したヒヅキは、それはいい事を聞いたと思った。流石にあれとは関わり合いにはなりたくはなかった。




