神域への道40
ヒヅキ達は倉庫内を色々と見て回った。大分奥行きはあるが、どうやら広さは他の部屋よりも狭いぐらいのようなので、両脇にずらりと棚が並んでいるのもあり、歩き回る分にはすぐ終わる。ただ、倉庫だからか他の部屋よりも高さがあるようで、高い場所の棚を調べる方が苦労した。
フォルトゥナの助けを借りながらも、気になった素材を回収しつつ、とりあえず一通り見て回ったヒヅキは、倉庫を出て一息つく。やや薄暗くて左右に棚が並ぶような場所だったからか、思ったよりも息が詰まったらしい。
少し休憩した後、ヒヅキは見取り図を取り出して確認する。
『あの実験器具が置かれていた部屋から倉庫までは同じような造りだったね。この見取り図の縮尺がいまいちよく分からないけれど、間に在った部屋数は同じだったし』
見取り図の上で指を動かしながら、ヒヅキはその考えで間違っていないなと頷く。
『という事は、その部分だけはこの見取り図も正しいのだろう。しかし、倉庫の方は見取り図では他の部屋と同じ正方形に近い四角形だったけれど、ここは縦長の倉庫だったね。やはり色々な倉庫を繋ぎ合わせたという事なのだろうか?』
ヒヅキは見取り図の倉庫の部分を示しながら、自身の考えを口にする。倉庫だけではなく、この建物の中身自体が色々なモノの寄せ集めなのかもしれないが。
『倉庫の中身は統一性が無く、保管方法としても疑問がある部分もありましたので、その可能性はあると存じます』
ヒヅキが自身の考えに没頭しそうになったところで、フォルトゥナがヒヅキの考えに賛同する。
『そうだね。おそらく時が止まっているか、調べても分からなかったけれど、繋げた倉庫ごとに環境が異なっていたのかもしれないね。でないと駄目になりそうな物も多かったし。もっとも、様々な倉庫を繋げた後に、倉庫の中身は整理していたような気もするが』
一緒に保管してはいけない素材や常温で保存が出来ないはずの物など、ところどころ保管や保存方法が間違っているはずなのに、問題なく並べられていたのを思い出しつつ、ヒヅキはそう語る。
それに、そんな出鱈目な保管・保存方法でありながらも、鉱石や薬草や食材などと細かく分類されて、棚に奇麗に並べられていた。それを成した何者かは、几帳面なのか適当なのかよく分からない性格をしているようで、ヒヅキにはそれがどことなく今代の神を思わせた。
方法は不明だが、とりあえず見やすかったのは確かなので、棚の高さ以外は文句はない。ただ、やはり少々気になってしまうのはしょうがない。それは現在居る場所について知る一助になるであろうし。
倉庫を離れて移動を開始した後も、ヒヅキは現在調べている最中の建物について考える。
事前調査では、この場所の外は存在しないとクロスが言っていたという。ヒヅキではそれが真実かどうか分からないが、分かりそうな女性は近くには居ない。フォルトゥナに尋ねてみると、クロスと同じ見解のようだった。
何が起きるか分からないので、軽々にそれを調べる訳にもいかない。なので、外には何も存在しないと考える事にした。そうなると、おそらくこの世界にはこの建物しか存在しないという事になる。
ならばこの建物について何か分かれば、この世界について分かる事もあるだろう。今のところ、この世界から先への道は未発見らしいし。
(この建物は巨大なうえに統一感があるので、何処からか調達したとか、様々な建物を繋ぎ合わせたとかではないだろう。という事は、この建物については今代の神か何かが用意したと考えるべきか。しかし、中身は様々な世界から調達してきたような感じだ。空き部屋が多いから分かりにくいが)
うーんと考えながらも、ヒヅキは慣れたように近くの部屋を確認するが、相変わらず何も無い部屋が多かった。廊下も果てしなく先まで続いている。
一体この建物はどれだけ巨大な建物だというのだろうか。それを考えると、ヒヅキは気が滅入りそうになった。




