神域への道24
そういう訳で、まだ魔導を使用していても問題なさそうなので、ヒヅキは引き続き魔導を行使していく。
そうしてしばらくの間魔導を使用したところで、ヒヅキはフォルトゥナに魔導を行使するかと問い掛ける。フォルトゥナも魔導の修練を積んでいたのだから、自分同様に本番に備えて大きな魔導も行使したいと思うのではないかとヒヅキは考えた。
ヒヅキの問いに、フォルトゥナもヒヅキと同じ方向へと魔導を行使する。様々な系統の魔導を使用するが、やはりどれもヒヅキより少し洗練されているように思える。同じぐらいに始めたというのに、僅かではあるが既に差が付いている。
魔素を扱えるようになってから、ヒヅキもずっと魔導の修練をしていたのだ。だというのに差が付いているという事は、それは才能の差ということでしょうがないかとヒヅキは思うが、それでもやはり悔しいものがあった。
今代の神との戦いまであとどれぐらいの時間があるのかは分からないが、それまでの間は今以上に修練に励もうとヒヅキは思った。きっとそこで終わりなのだとしても。
フォルトゥナの魔導の試し撃ちが終わったところで、ヒヅキ達は歪みに囲まれている場所に戻る。
灰色の世界は明るさが変わらないので時間が分かりづらいが、ヒヅキ達が歪みに囲まれている場所から離れて半日ほどが経っていた。期間は1日とはいえ、早く帰ってくる者も居るだろう。それに、大々的に魔導を放つという目的は済んだので、後は静かに修練に励む事にした。ついでに少し寝ようかともヒヅキは考えている。
歪みに囲まれている場所に戻ったヒヅキは、誰も戻ってきていないのを確かめてからまず寝る事にした。フォルトゥナに誰か戻ってきたら起こすように頼み、背嚢を枕にしてヒヅキは眠りにつく。
ヒヅキが目を覚ましたのは、それから数時間ほどしてからだった。床がひんやりとしていたからか思ったよりもよく眠れたようだが、それでも硬い床だったので起きた後に身体を解す。
それが終わると、魔力水を飲みながら干し肉と干した果実を食べる。乾燥野菜も少し残っていたのでそれも食べた後、ヒヅキは周囲を見回すが、まだ誰も戻ってきていないようだ。
(何か夢を見たような?)
まだ少し動きが鈍い頭で、ヒヅキはそんな事をぼんやりと思う。夢を見るのはおかしな事ではないし、それを覚えていないのもおかしな事ではない。なのに、何故だか妙に気になった。もしかしたら覚えていないだけで、あの声の主と話をしたのかもしれない。
(思い出せないものはしょうがないか)
夢の内容など、1度忘れたらそうそう思い出せるものではない。そう判断したヒヅキは、軽く頭を振って思考を正常に戻すと、思い出すのを止めて魔導の制御の修練を行う事にした。
それからしばらくして、歪みの1つから担当の英雄達が戻ってくる。
戻ってきた英雄達は周囲を見回し、まだ誰も戻ていないのを確かめると、中央付近で腰を下ろして休憩に入る。
ヒヅキとは言葉を交わしたことのない英雄達だったので、不便も無いのでそのまま互いに黙って休憩していく。
その後も各歪みから英雄達が戻ってくる。期限の1日までまだ少し時間はあるが、既に半分以上が戻ってきたようだ。
それからも時間の経過と共に帰還する者が増えていき、期限の1日が過ぎた頃には全員戻ってきていた。女性も英雄達も結構時間に正確らしい。それにヒヅキは少し感心した。
全員戻った後は、報告会に移行する。
ヒヅキは話を聞いているだけだったが、どうやら歪みの先には動物だけではなく生存者も結構居て、普通に暮らしていたらしい。
そこで住民に聞いたという話を聞いてみると、ヒヅキの居た時代の住民のようだった。つまりは大勢が歪みの先に避難していたという事になる。
更に詳しい報告に移ると、おそらく全員魂だけの存在なのではないかという事だった。つまりはお化け。英雄達のように肉体を得ている訳でもないようで、互いに話せても触れられなかったらしい。
以上の事から、報告ではこの歪みの先はスキアによって回収された魂の保管場所ではないかと推測されていた。




