神域への道18
周囲に意識を向ける。感知魔法では微妙に何かを感じる程度なので、ヒヅキは魔法ではなく自身の知覚に頼ってみる事にした。
それで直ぐに魔力は感じることは出来たが、魔素に関してはこれだろうか? という曖昧なモノを感じただけ。しかしそれは、今まで感じていた魔力とは違うようで、ヒヅキはこれが魔素なのだろうと思うことにした。もしかしたら別の何かかもしれないが、何も知らないヒヅキにとってそれは名称の違い程度なので気にするほどでもない。
その魔素に意識を集中して調べていく。まずはそれをしっかりと認識して慣れなければ扱う以前の問題であろう。
今は不要な魔力を出来るだけ意識から外し、感じている魔素を調べていく。といっても、魔素というものは名前だけ聞いたというものなので、まずはどうやって調べればいいのかを模索しなければならない。
(魔力ではない何かがあるのは分かるのだが……)
煙か霧でも掴もうとしているような気分になってくるが、移動時間は暇なので丁度いい。そう考えたヒヅキは、感じている力を意識しながら、まずは魔力を調べる時を参考に色々と調べていく。
(ん~、よく分からないな。魔力よりも実態が掴みにくいというか、細かいというか?)
ヒヅキが調べた範囲で分かったのは、現在のところそれだけ。魔力がパン生地だとすると、魔素は小麦粉とでもいえばいいか。それぐらいに細かさが違う気がするのだ。
手で掬えば少量は水が掬える。魔力とはそういう感じの存在で、集めようと思えば少量ずつだが簡単に集められる力だ。しかし、魔素は違う。同じ方法でも、魔素だと霧を手で掬おうとしているような気分になってくるのだ。結果として、どれだけ魔素を集めようとしても、ろくに集まらない。
それでは調べるのも一苦労というものだが、女性や英雄達は魔素を用いて魔法のようなものを行使していたので、ヒヅキが知らないだけで魔素を集める方法はあるはずなのだ。しかし、それが何かは皆目見当がつかない。
(実体がない、もしくは細かい力を集める方法か……)
うんとヒヅキは考える。今後魔素について調べるにも、何か集める方法を確立していた方がやりやすい。たとえそれでは魔法のようなものを行使出来なかったとしても、調べるのとそれでは別物だろうから問題ないであろうし。
ではどうするかをヒヅキは考える。霧を集める方法などヒヅキは知らないので、そう簡単に思いつく訳もないが。
それでも思案している内に、また襲撃があったようだ。考える事に集中していたので、ヒヅキは相手を見ていなかったが、それでも襲撃の頻度が一気に増えたなと思った。もしかしたらこの世界の終点が近いのかもしれない。
とはいえ、ヒヅキにとってそれについては今は別にどうだっていい事なので、思考の方に意識を戻す。
直前まで何を考えていたか思い出したヒヅキは、どうやって魔素を集めるかを考え始める。先程の襲撃の際に魔法のようなものが行使された時は意識がそちらに向いたので、多少参考にはなった。もう少し早くに気づけていれば答えが分かったかもしれないが、それはしょうがない。
その覚えている感覚を頼りに、ヒヅキは魔素相手に試行錯誤していく。魔素を集めるだけなので危険性は低いだろうから、割と自由に色々と試す事が出来る。
そうやって魔素に触れあっていると、大分馴染んできたのか、魔素という存在を感じやすくなった。まだ魔力ほどとはいかないが、それでも周囲に結構な濃度で満ちているというのは分かるようになった。それは大きな進歩であろう。
このままいけば、近いうちに魔素を集めるだけではなく、魔法のようなものまで修得できるかもしれない。そう思うも、時間はそれ程残されてはいない。
それでも魔素を集めるのはもう少しで上手くいきそうなので、もしかしたら時間内に魔法のようなものをひとつぐらいなら修得できるかもしれない。そうヒヅキは少し思った。




