神域への道14
壁は前回同様に女性が斬って破壊する。崩壊した壁の先には、やや黒っぽい灰色の道が姿を現す。
そのまま進み、女性達は壁を越えて道に出る。ヒヅキもその後に続いて壁を越えた。
壁を越えると、その先のやや黒っぽい灰色の道に出る。見た限り、道というには横幅はかなり広くはあるが、何となくここは道なのだろうと思えた。
道の終わりは遠すぎるのか、地平の彼方にあって全く見えない。白の世界ほどではないが、やはり全て同じ色だと感覚が狂う。空までもがやや黒っぽい灰色なのだから。
足下は固いが土ではない。魔力もあるにはあるが、やはり何かの力の方が濃度が高そうだ。道に出てから、何かの力の濃度が少し増したような気さえする。
風は無いし、においもない。先程までの平原とはがらりと様相が変わった。ただ、灰色の道は明るくはあった。太陽のようなものは確認出来ないので、道か空間が光っているのだろう。
ヒヅキは女性達に付いていきながら周囲を見回すが、何処までも黒っぽい灰色が続くばかり。一応遠目に丘っぽい起伏が確認出来るので、白一色の世界よりは精神的にかなり優しい。
感知魔法で周辺を探ってみるが、道が続くばかりで何も無いようだった。
何も無い中で前方だけを見ていると、距離感も方向感覚も狂いそうだが、ヒヅキは最後尾から付いていくだけなので問題ない。周囲に目を向ければ丘ぐらいはあるので、前に進んでいるというのは分かる。
「ん?」
しばらくそうして歩いていると、ヒヅキは進行方向からややずれた場所に何かが動いているのを見つける。何だろうかと凝視して見ると、それは巨大な人のように見えた。
(巨人?)
見た目だけで言えば、それはヒヅキが思った通りに巨人だった。その動く何かまで距離があるので分かるのは造形だけだが、巨大な人影が何か大きな物を手にしているように見える。
高さは巨人の近くに在る丘よりも高い。遠目なうえに目測でしかないので正確な丘の高さは分からないが、おそらく10メートル近い高さはあるのではないだろうか。それよりも高い巨人は、14、5メートルほどはある気がした。
そんな巨人が、ゆっくりとだが確実にヒヅキ達の進行方向側へと移動している。このままでは確実に巨人が進行方向を塞ぐような場所に移動するだろう。そのまま通り過ぎてくれればいいが、おそらくそれは無い。巨人はヒヅキ達の邪魔をしに来ているのだろうとは容易に想像がついた。
その巨大さに勝てるのだろうかと思いはするが、むしろ敗ける要素の方が少ないかとヒヅキは思い直す。何となく巨人は強そうではあるのだが、それでも英雄達の誰か一人でも勝てそうな気がしてくる。
それから少しすると、足下から僅かに振動が伝わってきた。巨人が移動する度に振動が起きているので、巨人が地響きの原因なのだろう。どれどけ重量があるのだろうかと思うも、近くなってきた巨体を見ればそれも納得出来るというもの。
巨人の手には巨大なこん棒が握られているが、よくそれだけ大きな木があったなと思わずにはいられないほどに大きい。しかもある程度の形に削られているので、原始的な技術程度は保有しているのかもしれない。
更に近づくと、巨人の全容が分かってくる。
巨人は青っぽい肌をしており、頭髪は無い。目は顔の横、こめかみの辺りに在り、少し眼球が飛び出している大きな目であった。他は人と大差ないが、やはり1番凄いのはその大きさだろう。
身長は目測14、5メートルほど。筋骨隆々なので横にも大きい。その姿を見れば、動く山という言葉が自然と頭に浮かぶぐらいに、とにかくその体躯は大きかった。
その巨人はヒヅキ達の進路上で1度立ち止まると、ヒヅキ達の方を向いた後、如何にも戦う気満々といった感じで向かってくる。
しかし、女性達はいつも通りの様子で巨人の方へと歩みを進めた。
少しして両者の距離は縮まったが、突然ゴキリという鈍い音がしたかと思えば、そのまま巨人が真横に吹っ飛んでいく。それを見たヒヅキは、誰かまでは分からないが、女性か英雄達の誰かがあっさりと巨人を倒したのだろうなと思ったのだった。




