神域への道7
(この感じは、何処かヒヅキ様が吸収した力に似ていますね。同じという訳ではないようですが、系統と言いますか本質と言いますか、そういう部分が近いような気がします)
土に含まれている力と似た力について思い出したフォルトゥナだが、それが分かったからといって何か進展がある訳ではなかった。
それはそれとして今回分かった事は、地面の中には力が無尽蔵に存在する事、花は土の中の力を外に出す管である事、花には力を隠すもしくは別のモノに変換する力が在るかもしれない事、土の中の力はヒヅキが吸収した力と何処かしら似ている事だろうか。
後はわざわざ花を通して外に出しているであろう力について分かれば一気に進展しそうだが、流石にそこまでは分からない。
(これが、以前ヒヅキ様がお話しくださった魔素という訳ではないでしょうし……)
女性の方に視線を向けてみると、またクロスと何かしら話し合いをしているようだった。おそらく道を繋げた後の打ち合わせでもしているのだろう。先程道を繋げる予行練習をしたようだし。
という事は、もうすぐ本番だろうかと思ったフォルトゥナは、ヒヅキの方に視線を向ける。
視線の先では、安らかに寝息を立てているヒヅキの姿があった。その姿に起こすのが偲びなくなったフォルトゥナは、もう少しそのままにしておく事にした。起こすのは女性が動き出してからでも問題ないだろう。
「ふぅ」
一息ついたフォルトゥナは、まずは土で汚れた手を洗う。水の魔法で出した水で手を洗うと、その後はヒヅキの傍でボーっとして過ごす。特に何かしたい訳でもないし、戦闘前に精神を研ぎ澄ませておく必要もない。今はただボーっとして、使った頭を休ませていればいいだろう。
そうしてフォルトゥナがボーっとした時間を過ごしていると、女性の準備が整う前にヒヅキが目を覚ます。
目を覚ましたヒヅキは、1度周囲の様子を確認してからフォルトゥナに何か変わった事はなかったかと問い掛けた。
それに何も無かったと答えるフォルトゥナ。未だに準備が終わっていないようなので、まだ少しは時間に余裕はあるだろう。
それを聞いたヒヅキは、空間収納から取り出した水瓶から魔力水を飲んで目を覚ました後、軽く魔法の練習をしてみる事にした。
今ではヒヅキも様々な魔法が使えるが、これから今代の神と戦う事を考えれば、光魔法の練習は外せない。魔法を付加するのも練習しておいた方がいいだろうし、何より今の身体に慣れた方がいい。睡眠を取って気力は十分なので、早速魔法の練習をしていく。
といっても、これから今代の神との戦いが控えているかもしれないので、あまり消耗してもいけない。魔力水があるとはいえ、水である以上、飲める量にも限度というものがあった。
その辺りを考慮しつつ魔力配分を行いながら、ヒヅキは魔法の練習をしていく。フォルトゥナはそれを黙って眺めながら、時折ヒヅキから飛んでくる質問や疑問に答えていく。そうしている内に結構な時間が経ったようで、女性の方の準備が終わる。
それに伴い、ヒヅキも魔力水を飲んで消耗した魔力を回復する。ついでに呼ばれる前に軽く食事もしておいた。
片付けを終えて整列すると、女性がこれからの流れを説明してくれる。といっても、道を繋げたら直ぐに偽りの器を破壊してから今代の神の許に向かうというだけだが。
今代の神との戦いについては、特に何も話が無かった。各自臨機応変に、という事なのだろう。英雄達に連携を要求するだけ無駄だろうと、ヒヅキでも何となく分かった。連携できるのであれば、道中で女性が指導でもしていただろう。英雄達は我が強いというか、協調性が弱かった。
もっとも、それでも主に戦いにおいての戦果で英雄と呼ばれているだけに、戦闘の玄人としてそんな状況でも足の引っ張り合いは起きないだろう。問題はむしろヒヅキか。
ヒヅキは英雄達が戦っている時には主に後方からの援護らしいので、それが難しい。ただ、援護と言ってもほとんど眺めているだけでいいという話だったが。
とにかく、そういった話を終えたところで、女性は早速今代の神へと続く道を繋げていく。
道を繋ぎ始めると、足元の花畑から光があふれだす。目も開けられないほどに眩しい光に、ヒヅキは思わず目を閉じた。




