神域への道6
(今のは不発……ではないでしょうね)
何も起きなかったのを確認したフォルトゥナだが、それはわざとだろうと推察する。感知した魔力が微量だったというのもあるし、女性が驚いている様子もない。おそらくだが、事前に何かしらを確認しただけだろう。フォルトゥナはそう思うと、花の方に視線を向ける。
(あれが完成すると、神への道とやらが出来るのでしょう)
先程の魔法の様子から、フォルトゥナはそう推測する。不完全とかそれ以前の話の出来だったが、魔力の流れを読めばある程度は理解出来るものだ。それでもほぼ完全に読めたのは、フォルトゥナの才能と研鑽の賜物だろう。
それはさておき、とりあえず道について少しは理解出来たフォルトゥナは、後でヒヅキに報告しようと思いながら、1本の花に触れて魔力を通してみる。
(やはり魔力が良く通りますね。私の推測通りなら当然ではありますが)
先程の女性のおかげである程度花について推測が立った事で、花を調べる方法がおぼろげながら分かってきたフォルトゥナは、少し前とは別の角度から花を調べていく。
しばらくそうした後、土の方に目を向ける。
(まだ確証はないですが、花の方はおそらく魔力を中継させるのが役目。他にも役割がありそうですが、とりあえず魔力を通す管であるのはほぼ確実でしょう。そして、土の方は力の源。もっとも、その範囲や量は不明ですが)
フォルトゥナは割と柔らかい土を手で掬うと、それをそのまま握ってみたり、親指と人差し指ですり合わせてみたり、においを嗅いでみたりと色々試してみたが、良質な土という事しか分からなかった。
(こちらの方は花と違って何か力のようなモノを薄っすらと感じるのですがね……)
その微かに感じた力を探ろうと集中しながら、何処かで似たような力を感じた事があるような? と何となく引っ掛かった。とはいえ、あまりにも微かな力なので、そんな気がするような気がする程度のかなり曖昧な感覚でしかない。気のせいだろうか? と思えば、直ぐにどうでもよくなるようなモノなので、今は力の出所について調べてみる事に集中する。
持っていた土を戻した後、フォルトゥナはそのまま地面に手をついて地中に意識を集中させていく。
「………………」
地面の下なので、調べるのが非常に難しい。地面の下を調べる為の魔法もあるのだが、これが存外難しく、狭い範囲であれば問題ないのだが、広範囲ともなると使える者が限られてくる。それこそ好んで地下に住んでいるようなドワーフとかの限られた種族から探さなければそうそう見つかりはしないだろう。
フォルトゥナは得意ではないが苦手というほどでもないので、そこそこの範囲でなら地面の下でも調べられる。ただし、もしも本格的に調べるのであれば、1度人が入れるぐらいの地下を掘らなければならないだろう。
もっとも、今回の目的は力についてなので、然程広域でなくとも力の分布が分かるだけでも問題ないだろう。力の源まで探すとなると地中深くまで探さなければならないかもしれないが。
そうして調べてみると、土に含まれている力は微量ながらも、調べられる範囲全体に分布しているのが分かった。それに、花が力を吸い上げると、減った分が地面深くから新たに供給されているのも分かった。1度の量としては微量でも、尽きることのない力であれば花の光が消える事はないのだろう。光自体それほど力を使っている訳でもないようだし。
(それにしても、力が花に吸収されると、途端に力が分からなくなりますね。隠蔽するようになっているのでしょうか?)
内心で首を傾げたフォルトゥナだが、とりあえず僅かではあるがこの場所がどうなっているのか理解出来た。それと、地面をそれなりに広範囲に調べた事で、土に含まれていた力が何に似ていたのかを思い出したのだった。




