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神域への道2

 確認した短剣の刃は無事であった。特別な短剣ではないが、切れ味だけは鋭い。魔法で強化していれば耐久力も増すので、そのおかげだろう。おそらく強化していなければ刃が少し欠けていたと思われる。

 フォルトゥナは少し考えるように目を細めたが、直ぐに切断した蕾の方へと視線を向ける。

 半ば近くから断ち切られた蕾の中を覗いてみると、そこには何も無かった。花であればあるはずの雄しべやら雌しべなども無く、まるで何かしらの容器であるかのように花の中には何も無い。

(やはり人工物?)

 花の感触はしっかりと植物なのだが、しかし蕾の中身はどうみても人工物。花の部分だけで言えば、何かの容器に花弁を貼り付けたというよりも、花の中に容器を埋め込んだといった出来栄え。それが本当であれば、その技術自体は素晴らしいと評価できるだろう。しかし。

(何の為に?)

 フォルトゥナは花を眺めた後、周囲に視線を向ける。一面花畑で、その花は全てがフォルトゥナが手にしている花と同じ種類だ。見ているとたまに一瞬だけ光るのは、ごく小さな光の玉を出しているからだろう。

 それ以外には蕾の中が光っているというぐらいしか特徴がない。フォルトゥナが切断した花は、蕾の中の光が消失していた。

(生きていると光っているという事でしょうか? それとも壊れたから?)

 試しにもうひとつ花を根ごと引き抜くも、蕾の中の光は消えることはない。思い出してみても、先程もフォルトゥナが蕾を切断する前までは、蕾の中で光を放っていた。

(もしくは光っているように見えるだけ、とかでしょうか?)

 蕾の中で光が在るように見えて、実は幻影か何かでそう見せているだけではないか、その可能性を考えたフォルトゥナは、今し方引き抜いた花に視線を向けてみる。

 調べてみるも、やはり魔力は感じない。魔力を視る事が出来るフォルトゥナでそれなのだから、やはり花に魔力は無いのだろう。

(ならばこの光は?)

 幻影だろうがそうでなかろうが、魔力が感知出来ない以上、その光は魔法という訳ではないのだろう。であれば、何故光っているのか? そう疑問に思うも、切断した方の花を調べてみても答えは出ない。

(この花の特性という事なのでしょうか? 確かに世の中には光る植物というのは存在しますが)

 数は少ないが、植物の中には自ら光を発する植物というのが実在する。しかし、そういった植物が発する光は大抵淡いものだし、何より蕾の中だけ光っているというのは聞いたことがない。

(この蕾は開くのでしょうか?)

 蕾であるならば、普通の植物であればいずれ花開くのだろうが、フォルトゥナはこの花はこれで完成しているのだろうと、何となくそう思った。そもそも切断した蕾を見るに、普通の植物同様に種子という物が在るとは思えない。しかし、周囲を見れば同じ種類の花が咲き乱れている。

(他では見た事がないので、ここで栽培されていた? それともここで作った花を植えていた?)

 仮にこの花に種子が在ったとしても、周囲が高い壁で囲われているので、種子が外に飛んでいくというのは難しいだろう。であれば、ここでしか生息していないというのも理解出来る。標高も高そうなので、真上が塞がっていないからといって、鳥も容易に入ってはこれないだろう。ここには虫などの餌も無さそうだし。

 花なのか違うのか。その辺りからして不明な謎の存在に、フォルトゥナは困惑しつつも、更に詳しく調べていく。

(花以外は本物の植物で間違いないとは思いますが、問題は花の部分。これは人工物と自然物が混じっているような感じですからね)

 切断した花や採取したばかりの花を触ってみるも、違いは感じられない。触感に限って言えば、外側だからとか内側だからとかそういうのは無いようだ。しかし、切断した時の手応えは花のそれとは明らかに違っていたのは確かだろう。

 花を弄りながら、フォルトゥナはうーむと思案する。そもそもこの花の役割は何か、それ以前にそんなものが在るのか無いのか。考察するにも、そんなところから考えなければならないというのも大変だった。

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