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神域への道

 もうすぐ今代の神との戦いが始まる。

 女性がそう告げると、英雄達はそわそわとして落ち着きをなくす者や瞑想して精神集中をする者、念入りに武器の手入れをする者など、普段休憩時の適当に気を抜いている姿はどこにも無かった。

 ヒヅキは背嚢や空間収納の中身を整理したり、水筒の中身を補充したりした後、荷物の整理をした事で思い出した事などを行って時間を潰す。今代の神との戦いと言われても実感が湧かないというのもあるが、ヒヅキは自身が主力だとは認識していないので、英雄達よりは気楽なものだ。

 女性が道を探す時間や世界の中心で偽物の核を破壊する準備などがあるので、今回の休憩時間はかなり長い。なので、ヒヅキはついでに少し寝ておく事にする。

 花畑の上に敷いた防水布の上で横になるも、元々一人用として用意していた防水布なので、やはりフォルトゥナと一緒では狭い。それでも足がはみ出す程度で寝れないほどではないので、フォルトゥナに女性の準備が終わったら起こしてくれるように頼むと、背嚢を枕にしてヒヅキは眠りにつく。膝枕よりも背嚢の方が寝やすかったようだ。

 ヒヅキが眠っている間も、着々と準備が進む。もっとも、本当に道が開くのかどうかはやってみなければ分からないので、これだけ大騒ぎして何も無いという可能性も一応はあった。

「………………」

 フォルトゥナはヒヅキの傍に座りながら、周囲に目を向ける。戦いに向けて準備している者達が目につくが、それよりもフォルトゥナは、花畑を形成している花の方に視線を向ける。

 それは薄水色の儚げな花で、まだ蕾なのか花は閉じている。しかし、よく見ればその花弁は半透明のようで、中に淡い光が在るのが分かった。

 妙な花だと思うも、その花からは魔力を感じない。それも奇妙ではあるが、感じないものはしょうがない。

 それからしばらく観察してみると、花からたまにごく小さな光の玉がぽわっと浮かんでは直ぐに消えているのに気がつく。それは幻想的な光景ではあるし、夜に見れば奇麗なのかもしれないが、フォルトゥナの知識の中にそんな花は存在しない。

「………………ふむ」

 フォルトゥナは少し思案した後、近くの花を根っこごと引き抜いて観察する。光っている花の部分を除けば、葉が在って茎が在って根が在る普通の花だ。特段見た目におかしなところは無く、光を放つ幻想的な花という以外には特徴らしい特徴もない。もっとも、それだけで十分特徴的な花ではあるが。

 そのまま手にした花に魔力を通してみると、フォルトゥナは思わず一瞬眉根を寄せた。

(中身がスカスカですね。それに、まるで魔力回路を通しただけのような、魔力に対する抵抗の無さ)

 すんなりと花の隅々まで魔力が通った感覚に、フォルトゥナは困惑と驚愕を抱きながらも、もう少し詳しく調べてみる。

(やはり花自体には魔力は感じられませんね。どうやって光を放っているのかはともかく、だというのに魔力を容易に通す性質を持っている。まるで花の形をした装置のような? しかし、これはちゃんと生きているように見えますし……)

 フォルトゥナは葉や茎などの表面を撫でたり押してみたりしてみるも、その度に作り物にしては生々しい感覚が返ってくる。少し潰してみると青々としたにおいがするし、試しに茎や葉を切断してみるも、やはり作り物とは思えなかった。

 ますます意味が分からなくなったフォルトゥナは、最も特徴的な花の方も調べてみる。

 まずは花弁に触れてみると、他よりも温度が低いようで、触れた指先がひんやりとする。蕾を指で挟んで軽く押してみるも、やや花弁が硬い程度でおかしなところはない。

 しかし、蕾の中を見てみようとするも、蕾は上手く開かない。しょうがないので切断してみると、先程触れた時の感触以上に硬質な物を切断したような感覚が返ってきて、思わずフォルトゥナは使った短剣の刃を確認してしまった。

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