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旅路139

 砂の道を通った英雄全員が地上に揃うと、女性は砂の壁を崩して道を埋め立てる。それは一瞬の出来事であった。それでいながら、ヒヅキ達のところを含めて周囲には一切影響が無い。

 そうして道が無くなり、ヒヅキ達の前には変わらぬ砂漠の様子が広がるのみ。直ぐそこに道が在ったなど、埋め立てられる瞬間も見たというのに信じられないほど。

 そうした後始末を終えたところで、女性は移動を開始する。

 ヒヅキは先程の女性を真似て、移動先の足下に障壁を極小展開させてその上を進む。通り過ぎた後には消すが、おかげで砂に足を足られることが無くなった。これは沼など他の場所でも役立つ技術だろう。もしかしたら女性がどんな場所でもスイスイと進むのは、この方法を用いているからかもしれない。

 そうやって練習も兼ねながら魔法を行使しつつしばらく進むと、徐々に地面の色が変わっていく。そして完全に地面の色が砂色から土色に変化した辺りで小さな集落が見えてきた。

 その集落に向かうと、何と人がまだ残っていたようで、集落内に入ると数名の姿が確認出来た。

 ヒヅキは風の結界を解いてから感知魔法を使用すると、家の中にも人が居るのを感知する。どうやらここはまだ機能しているようだ。人口が少ないからかもしれない。

 女性は集落内で一際大きな家を目指す。長の家だと思われるので、挨拶でもするのだろう。

 集落内には、家が数10軒ほど建ち並んでいるが、どれも平屋で造りもやや粗い。広さも五六人程度が住むのを想定しているといった家が多い。

 少なくとも、ヒヅキ達一行が泊まれるような場所は存在しないだろう。それは別にいいのだが。

(腕が4本に目が4つ。ここは何という種族の集落なのだろうか)

 ヒヅキは確認出来た人の姿を見て、やはりここは人間界ではないのだなと改めて思う。というより、見た事も聞いた事も無い種族なので、人間界からはかなり遠い地なのだろう。

 集落の人達は、ヒヅキ達を興味深げに見ている。ヒヅキ達はそれなりに大人数だが、警戒している様子はほとんどない。

 女性が大きな家の扉を叩くと、中から男性が出てくる。この男性は、他の者と違って腕が6本もあった。

 その男性が集落の長だったようで、女性は近くで少しの間野営してもいいかと尋ねる。それに男性は直ぐに許可してくれた。それどころか、必要な物が在れば言ってくれれば多少は融通できると言ってくる。それに礼を言って、女性は長の家を後にした。

 そのまま集落を出ると、女性は集落近くの平らな地で足を止めて休憩を取ることを告げる。

 ヒヅキは早速英雄達から少し離れた場所に防水布を敷く。

「今回は少し長めに休憩を取りますから、ヒヅキは少し寝ているといいですよ」

 防水布に腰掛けたヒヅキに近づいてきた女性はそう告げると、別の場所へと歩いていった。

 ヒヅキは少し考えた後、折角だからと仮眠を取る事にする。女性から貰った金属から力の吸収を行ってから寝ていなかったので、そろそろ試してみてもいいだろうと思ったのだ。

 防水布の上は狭いので、隣に座ったまま動く気の無いフォルトゥナに膝を借りて丸まって眠る。地面は岩でなく土ではあるが硬い。姿勢もいいものではないので、あまり深くは眠れそうになかった。

 それでも十分かと思いながら、ヒヅキは意識を沈めるのに集中していく。程なくして、ヒヅキは浅い眠りについた。

 それから少しして、ヒヅキは目を覚ます。目を覚ましたところで、何か変化はないかと自身の身体に意識を向けた。

 まず外見的には寝る前と変わらない。次に内面的な部分だが、仮眠したとはいえ妙に身体が軽いので、また身体能力が向上したのだろう。それも今回は大幅に上昇した気がしした。

 魔力の方もとんでもなく増しているようで、今ならフォルトゥナともいい勝負が出来るかもしれない。いや、もしかしたら勝てるかもしれないほどだ。

 後は実際に軽く体を動かしてみなければ何とも言えないが、やはり吸収した力に適応するには休憩ではなく、仮眠でもいいから睡眠が必要という事なのだろう。

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