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旅路131

 飛び出してきた白い何かは、そのまま一直線にヒヅキへと突撃してくる。それはかなりの速度で、目で追うのがやっとというほど。

 突然の事に反応が遅れたヒヅキの前にフォルトゥナが出るも、しかし白い何かは、前に出たフォルトゥナをするりとすり抜けてヒヅキの許に到着する。

 質量がないかのようにフォルトゥナを貫通したそれは、ヒヅキの前に来ると跳びかかってきた。

 ヒヅキは反射的に腕を前に出して身体を庇うも、やはりするりと腕をすり抜けてしまう。

 そのまま白い何かはヒヅキにぶつかると、通過することなく、まるでヒヅキと一体化するようにして消えてしまった。

 ヒヅキは振り返ってみるも、そこには白い何かは居ない。消えていったのは気のせいではなかったという事だろうかとヒヅキは首を傾げながら、何かおかしなところはないかと自身の身体の内側に意識を向ける。

「………………」

 しばらくそうやって調べてみるも、これといって気になるところは無い。調子が悪いという事も無いので、しばらくは様子をみることにした。

 心配そうなフォルトゥナに問題ない事を告げた後、ヒヅキは白い何かが飛び出してきた扉の方に視線を向ける。

 ヒヅキが視線を向けた時には、ちょうど扉の先を調べ終わったらしい女性が出てくるところだった。何かあったか気になったので、ヒヅキは尋ねる為に女性に近づいて声を掛けた。

「何かありましたか?」

「いいえ、何もありませんでしたよ。隠してあったので、元々は宝物庫か何かだったと思うのですが、何かしらの残骸が散乱しているだけでしたね。価値ある物は全て持ち出したのか、他には何も無かったですね」

「そうですか。では、先程のあの白い何かは何だったのでしょうか?」

 ヒヅキが悩ましげに問うと、女性は考えるように僅かに首を傾ける。

「そうですね……」

 そう言って振り返ると、女性は扉の先に視線を向けて言葉を続ける。

「先程あの部屋には何かの残骸が散乱していると言いましたが、思えばあれは何かを封印する術具だったのかもしれませんね」

「術具ですか?」

「魔法道具みたいなものです。それが壊れていたので、あの白いのは封印から解き放たれていたのでしょう。いつそうなったのかは知りませんが、壊れたのは大分前のように見受けられました。しかし、何故かは知りませんが、あの白いのはあの部屋にそのまま留まっていたようですね。あの部屋自体には大した仕掛けは確認出来なかったのですが」

 不思議そうにそう答えた女性だが、結局あの白いのが何かまでは分からないようだった。

「そうでしたか……私もあの部屋を調べてみてもいいですか?」

「どうぞ。折角ですからここで休憩にしましょう」

「ありがとうございます」

 時間を作ってくれた女性に礼を言ったヒヅキは、早速扉の先に向かっていく。

「………………」

 その背を見送った後、女性は英雄達に休憩することを告げた。先程の会話で女性は僅かもヒヅキを心配する素振りをみせなかったのだが、ヒヅキはそれに気がつかなかったのか、特に気にしなかったのか。

「……さて、どうなるのでしょうね?」

 英雄達から離れた場所で一人休憩する女性は、誰に言うでもなくポツリとそう零す。

「悪いようにはならないとは思いますが」

「なってもらっては困るのですがね」

「おや?」

 横から聞こえてきた声に、女性はわざとらしく驚いたような声を出して視線を向ける。そこには、女性を睨むように見詰めるクロスの姿があった。

「いつの間に?」

「白々しい反応は要りませんよ」

「そうですか。こういうやりとりも大事ですよ」

「そんな事しなくとも、余裕は持っていますよ」

「そうですか」

「それで、何か用ですか? わざとらしい呟きを聞かせる為だったなら向こうに行きますが」

「あの部屋は何の部屋なのですか? ここは貴方が遥か昔に造った場所では?」

「ここは私ではないですね。大方、私の死後に誰かが真似て造ったのでしょう。出来としては中々いい物です」

「そうでしたか。それで、あの部屋は何の部屋なのですか?」

「ここは私が築いた訳ではないのであくまで推測ですが、あの部屋は特別な牢獄だったのではと」

「何もありませんでしたが?」

「部屋に施していた物が効力を失って消失したのでしょう。私の真似をして築いたのであれば、そういった物ぐらいは造っているでしょうし」

「なるほど」

「他には?」

「いえ、別に。ありがとうございました」

「そう……まぁ、それでいいならいいですけれど」

 その返答に肩を竦めたクロスは、女性から離れて英雄達の方に合流する。話を終えた女性は、視線を扉の先の方に向けたのだった。

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