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旅路130

 ヒヅキもその後を追って砂の斜面を滑り降りる。

 通常の地面と違って砂は足を飲み込むので、滑るのも苦労した。それでも何とか穴から下に降りると、砂の山の上に着地し、そのまま滑り降りて砂の山から距離を取る。

 次々と穴から落ちてくる英雄達を、いつの間にか隣に居たフォルトゥナと共に眺める。女性は周辺を調べているようだ。

 周囲を見回してみると、穴の中は広い部屋だったようで、見た限り何処かの遺跡のように思える。その部屋の天井部分が崩れて、上に載っていた砂が大量に流れ落ちてきたといったところか。

 広い部屋の大半をその砂の山が占めているが、天井の穴は中央辺りなので、端の方は余裕がある。壁には壁画らしきものが描かれているが、掠れていて満足に確認出来ない。

 英雄達全員が穴の中に入ると、部屋の隅で隊列を整える。その頃には女性も戻って来ていて、全員が揃ったところで、ふたつ在る部屋から続く通路の内のひとつを通って先へと進む。

 石造りの古めかしいその遺跡はかなりの年代を感じさせるが、未だに頑丈そうに見える。天井に穴が開いたとは思えないほど。

 しばらく通路を進むと、光が届かなくなり暗くなってくる。そこで先頭を進む女性が小さな光球を幾つも浮かばせた。ヒヅキの光球とは違う魔法のようで、その光球の明かりは何処か無機質な明かりに感じられた。

 隊列全体を照らすように頭上に散った光球は、移動に付いてきながら広範囲を照らす。しかし、個々はそこまで強い光という訳ではない。それでも全体では普段ヒヅキが使う低出力の光球よりも明るい。やはり数は力ということか。

 光球に照らされながら通路を進むと、また広い部屋に出る。そこは広いばかりで何も無い部屋だった。

 それでも大量に並ぶ石柱がなんとなく厳かな感じを演出している気がする。ヒヅキが部屋を感知魔法で調べてみた限り、どうやらその部屋の奥にはまた通路が在るようだ。

 女性はそのまま真っ直ぐ通路を目指して進む。広すぎて光球が照らす範囲では壁が確認出来ない。

 光に浮かぶ石柱は何とも不気味で、今にもその裏から何かが飛び出してくるのではないかと思わせてくれる。とはいえ、ヒヅキ達以外に何か居る様子はないので、そんな事はないのだが。

 部屋の奥から通路に出ると、少し進んで小部屋に到着した。中央に何かの獣を象った像が台座に載せられており、今にも飛び掛かってきそうな迫力があった。

 他に何かないかと調べてみるも、像が在るだけの小部屋のようだ。光球の明かりでも全容が確認出来るぐらいに狭い。

 女性はその獣の像を眺めながら像の周囲を1周すると、像を正面から魔法で破壊した。

「!?」

 何の前触れも無く魔法を放った女性にヒヅキは少し驚いたが、粉々になった像の方に視線を向けると、その像は自動で修復されていくところだった。まるで時が戻っているかのように破片が勝手に集まっていき、像を形成していく。しかし、完成した像は破壊する前とは別の像であった。

 どういう事かとヒヅキが首を傾げたところで、女性が再度像を破壊する。しかし、またしても時が戻るようにして修復していき、修復が終わると、今度もまた別の像になっていた。

 そんな事を数度繰り返した後、像が最初の獰猛そうな獣から偉そうな人に変わったところで、ズズという重い物が擦れるような音が僅かに部屋に響く。

 それを聞く前に女性は部屋の奥の方へと移動を始めていたので、この仕掛けをしっかりと解いていたのだろう。相変わらずよく分からない推理力である。それとも最初から知っていたのか。

 もっとも、そんな事はどうでもいいのだが。今は女性が開いている最中の、壁に擬態していた扉の先に何があるのかの方にヒヅキは興味があった。

 程なくして、女性は重そうな扉を特に苦労もせずに一人で開いてみせる。そうして扉が開くと、中から白い何かが飛び出してきた。

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