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仕事3

「え?」

 シラユリの答えに、ヒヅキは短く驚きの声を上げる。

 前線砦が落とされてる。それはつまり、ガーデンに戦線が近づいているという事になる。

「だから3ギルド合同?」

 スキアの相手が出来るのは冒険者だけ。ヒヅキなどは数少ない例外だ。

 そして、冒険者はその大半がギルドに所属している。ここガーデンの冒険者も例外ではない。

 冒険者は政治が干渉する事を嫌うが、だからといって、このまま拠点としている街や国を見殺しには出来ない。結局王国側と協力する事にした冒険者達ではあったが、現状はその冒険者が大量に配置されているはずの砦がどんどん落とされ、戦線が後退している。それがもたらしたものは、深刻な冒険者の不足。

 最初に聞かされた際の疑念通り、だから今回は3ギルド合同での護衛任務という事なのだろう。

 前にヒヅキがシラユリを訪ねた際にも冒険者はほとんど見かけなかった。これでは街の人の依頼も滞っている可能性もある。

「そうだよ。人が居なくてねー」

 なっはは、と苦笑気味に笑うシラユリ。

 冒険者でこれなら兵隊はどうなんだろうか? 冒険者よりは数が多いとはいえ、兵士の数も無限ではない。

 思っていたよりも事態は深刻らしい。そう考えを改めたヒヅキは、困ったように頭をかいた。

「あら? もうみんな集まってるの?」

 そんなヒヅキたちの横合いから声が掛けられる。その声は妙に艶かしい響きを伴っていた。

「やっとお出ましか、おっぱいお化けー!」

 その声の主を確認するまでもなく、シラユリは鋭い視線をその声が掛けられた方へと向ける。

「あら、シラユリちゃんじゃない。相変わらず可愛らしいわね。人の影に隠れてしまうぐらいに」

「何をー! 喧嘩売ってるのか、このおっぱい年増ー! 安値で買い叩いてやるぞー!」

 特別強い敵意や殺意を向けてる訳ではないのだが、見詰め合うシラユリとサファイアの間には、火花が幻視出来るぐらいに緊迫している。

 そこにはある種の意地のようなものが横たわっているように思える。

(これが噂の女の意地?)

 ヒヅキは頭の片隅でそんな事を思いつつも、見詰め合う二人をどうしたものかと頭を悩ます。

 シラユリとサファイアは見事な対比となっていた。

 例えば、シラユリが幼子のような身長ならば、サファイアは男性の横に並んでも遜色無いほどに背が高い。

 例えば、シラユリが純真無垢というような可愛らしい顔立ちならば、サファイアは妖艶という言葉を体現したかのような艶やかな顔貌をしている。

 例えば、シラユリが幼子のような見た目通りの少し丸みのある体型ならば、サファイアは思わず男性が生唾を飲んでしまいそうな、凹凸のはっきりした扇情的な体つきをしていた。

 他にも声の質も違い、シラユリが明るく元気な声色ならば、サファイアは色気に溢れた濡れた声音をしている。

 雰囲気も、シラユリが快活としているならば、サファイアは実に蠱惑的であった。

 そんな二人が言い合う姿はなんというか、子どもが大人に食って掛かるというより、親子喧嘩のような感じがしてくる。

「まぁまぁ。とにかく、これで役者が揃ったのだから。一度荷物や人の数を確認してから、ガーデンを発とうではないか」

 そう言ってシロッカスが二人の間に割って入る。

 それでサファイアはシラユリへの興味を無くすと、依頼主であるシロッカスへ挨拶をはじめた。

 それを見たシラユリは、静かにその場を離れる。

 その姿を目にしたヒヅキは、そういえばまだ礼を言ってなかったと思い至り、そんなシラユリの後を追った。

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