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旅路122

 平原を過ぎると、山があった。進む先は丁度山と山の間に通っている道のようで、狭いながらもそこにはちゃんと道がある。

 道の片側は崖のように切り立っているが、もう片方は山裾のようで、緩やかな坂になっている。ただ、森が近いので見通しが悪い。

 獣道というには立派ぐらいの道を通り、一行は先へと進む。三人横に並べば窮屈という道は、蛇行しながら先へと伸びている。

 山間だからか日中でも影になる道なだけに、草は疎らで地面が見えている。草の背丈も低く、整備されていない道にしては通りやすい方だろう。

 時折風に揺られて擦れる葉音が聞こえてくるぐらいの静寂の世界。普通は自分達以外は全て消えてしまったかのような感覚すら抱くほどだが、一行にそれを気にしている者は誰一人として存在しない。

 粛々と山間の道を進むこと一日と少し。やっと終わりが見えてくる。しかしその先は山。頂上は近いようだが、道は急そうであった。

 女性はその手前の少し開けた場所で休憩を取らせる。足下は程よく水気を含んだ土で、そのまま座るとひんやりとするだろう。

 ヒヅキは少し離れた場所で防水布を敷いて腰掛ける。あまり疲労は無いが、休める時には休むべきだろう。それに、もしかしたら休憩したら吸収した力が馴染むかもしれない。あの時は仮眠とはいえ寝ていたので、期待はしていないが。

(それにしても……)

 防水布の上に腰掛けながら、ヒヅキは自身の手を見る。長いこと歩いていたので、今までであれば多少疲労を感じていただろう。まだまだ問題なかったとはいえ、身体の芯に残る僅かな重さぐらいは感じていたはずであった。しかし、現在はそれがまるで感じられない。

(これが吸収した何かの力なのだろうか?)

 単に旅をしてきて鍛えられたからという可能性も無くはないだろう。しかし、あの首都に到着する前と後で明らかに違う以上、流石にその可能性は無いと断言出来た。

 とはいえ、変化自体は魔力以外はそこまで大きくはない。身体能力で言えば、試さねば気づかない程度の変化である。しかし、その地味な変化が地味に効果を発揮しているようだ。

 悪い事ではないのでそこまで気にはしないが、まだまだ見えていない部分もあるのだろう。それでも、ヒヅキではもうどうする事も出来ないので、変化を確かめるぐらいしかやる事はない。

 心を侵され蝕まれ、それが終わったら今度は身体の方が侵食されていく。今更と言えば今更なその事実に苦笑を浮かべたヒヅキだが、それを自覚して尚、その程度の反応しか起きないぐらいにはヒヅキは壊れていた。慣れているというのもあるのだろうが、それを差し引いても異様であった。

 しばらくジッとしながら身体を休めるも、ヒヅキの身体に変化はない。少なくとも、前回のような身体の内側から力が溢れてくるような解りやすい変化は起きていない。

 やはり寝ないと駄目なのだろうかと思うも、それはまた次の機会にという事になるのだろう。そろそろ休憩は終わりそうであるようだし。

 グッと伸びをした後、ヒヅキは立ち上がって片付けを行う。手早く済ませたところで、女性が休憩の終わりを告げる。

 休憩を終えると、そのまま山を登る。急な坂道ではあったが、直ぐに頂上に到着した。

 頂上に到着後も休むことなく、女性は今度は山を下りていく。頂上から周囲を見渡すと、どうやら山を下りた先にひと回り低い山があり、その先に更に低い山がありと、段々と山が低くなっていくらしい。その先には台地が広がっており、その上に森が在るのまでは何とか確認出来た。

 ヒヅキは直ぐに女性の後に続いて下山していく。そして少し進むと次の山に到着した。それもまたそのまま登っていく。

 そうして幾つもの山を上り下りしながら進むと、ヒヅキはようやく最初の山の頂上から確認出来た台地に辿り着いた。

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