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旅路119

 しばらく街道を進むと、道が石畳から木の板の道に変わる。そしてその辺りで、道の横に広く拓かれた場所があった。休憩する為の場所だろう。距離的に考えて、平時であれば首都へ向かう為の最後の休憩場所として重宝されていたのだろう。

 その休憩場所を過ぎて更に進むと、今度は分かれ道に差し掛かる。このまま真っ直ぐ進む道か、横に逸れていく道か。

 女性は迷うことなく、どちらでもない街道の続いていない方向へと進んでいく。今までも街道のような整備されている道を通る事の方が珍しかったので、ヒヅキ達に特に驚きはない。

 街道を逸れると、途端に草だらけになる。膝より上の背丈の草も多いが、先行している女性が少し広めに草を刈りながら進んでいるので、後から付いていくだけのヒヅキ達は煩わしくなくて楽なものだ。

 そのまましばらく進むと、遠目に森が見えてくる。規模は小さそうだが、そこそこ木が密集しているようだ。それに背の高い木が多い。

 更に進んで森の前まで到着すると、女性は少し離れた場所の草を広く刈って休憩を告げる。ここに来るまでに首都から約1日経過しているが、途中まで街道を使用していたので、その分移動速度が速くていつも以上に遠くまで移動できた。

 休憩を言い渡した女性は、英雄達が刈った草の方へと移動していくなか、ヒヅキに話し掛けてくる。

「ちょっといいですか?」

「どうかしましたか?」

 それに応じたヒヅキは、何かあっただろうかと思考を巡らす。しかし、こんな場所で声を掛けられるような事はなかったようなと内心で首を捻った。

「ええ。これを貴方にと思いまして」

 そういうと、どうぞと言って女性は何かを持った手を差し出す。

 それに訝しがりながらもヒヅキが手を出すと、その上にチャリチャリと数枚の硬貨がぶつかるような軽い音が鳴る。

 音が止んで女性が手をどかすと、ヒヅキの手に平の上には平べったい金属のようなモノが数枚載っていた。しかし、硬貨というには歪な形をしている。不揃いなそれらは、材質が違うのか色もまた異なっていた。

「これは?」

 そんな金属にヒヅキは首を傾げる。何かしら貴重な品という感じもしないし、それを渡してくる意味が分からなかった。

「金属屑とでも言いましょうか。まぁ、破棄された失敗作の破片みたいなものです。ですが、それはどうでもいいのですよ」

「?」

「気づきませんか?」

「何をですか……?」

 女性の言葉に、ヒヅキは眉根を寄せて金属に目を向ける。どれだけ見てもやはり価値ある物には見えず、女性が言うように如何にも失敗作といった感じであった。

 だが、それはどうでもいいらしい。では別に何があるのだろうかと、ヒヅキは手のひらの上に置かれている金属を様々な角度から観察していく。

 そうしていると、横からフォルトゥナが声を掛けてきた。

『その金属からも微弱な気配がします』

『微弱な気配?』

 フォルトゥナのその言葉に、ヒヅキは一瞬何の事だろうかと思ったが、直ぐにあの石の事を思い出した。

 思い出したところで、ヒヅキはその金属に意識を集中してみる。すると、確かに何かを吸収しているのが分かった。それも数枚ある金属全てから。

「……これを何処で?」

「鍛冶場のゴミ捨て場にありましたよ。ほとんどのゴミが回収されたなかで、寂しく隅に残ってましたね」

 女性は何処か同情するような声音でそう言うが、ヒヅキが聞きたいのはそういう事ではないので聞き流す。

「これが何かご存知なのですか?」

 先程の女性の発言を考えれば、女性はこの何かについて知っている可能性が高かった。かといって、素直に教えてくれるとは限らないが。

「先程も言いましたが、金属屑ですよ?」

「そういう事ではないのですが……」

 さも当然とばかりそう言い放った女性に、ヒヅキはどう言えばいいのだろうかと頭を抱えたくなる。女性は喋らない時は終始こんな感じではぐらかすのだから。

 とはいえ、たまに単にからかっているだけという事もあるので、ヒヅキはめげずにもう1度女性に尋ねてみる事にした。

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