仕事2
武器輸送当日。
ヒヅキはシロッカスと共に集合場所の東門前へと移動する。
ヒヅキ達が到着した時には荷台とそれに載せられた武器と食料。それを運ぶ人足の人たちが既に集まっていた。
「?」
「あっ! おーい! ヒヅッキー!」
ヒヅキはその場に集まる人足の人たちが着ている、妙に分厚い防具に首を傾げるも、直後に久方ぶりに耳にした幼い少女のような可愛らしい声が掛けられ、ヒヅキはそちらの方へ顔を向ける。
そこには、自己主張するように上げた片手を振りながら駆け寄ってくる一人の幼女の姿があった。
「おはようございます。シラユリさん」
その幼女であるシラユリに、ヒヅキは頭を下げて朝の挨拶をする。
背の低い愛くるしい外見も、可愛らしい声音も完全に幼女なのだが、信じられない事に、この眼前の幼女はヒヅキよりも歳上であった。
「おはよう、おはよう。今回も一緒だねー。よろよろー」
シラユリは機嫌よく挨拶すると、ヒヅキの背中を叩いた。
「他の護衛の二人は来てないのかい?」
そんなシラユリに、シロッカスが周囲を窺いながら問い掛ける。
「んー? 二人来るのかー? 一人ならあっちの荷台のところに居るけど、もう一人はまだ見てないなー」
シラユリが指差す方向に目を向けると、確かに一人だけ服装の違う男性が、荷台の近くで人足の人たちに混ざって会話をしていた。
「おー確かに彼だ。ということは彼女の方はまだか」
男を認めたシロッカスは大きく頷くと、もう一度周囲に目を巡らせる。
「彼女って誰だー? 私の知ってる女かー?」
「ん? サファイア君だよ。シラユリ君とは同じ仕事を請け負った事がある、と先方から聞いているが?」
「サファイア、だとー!」
シロッカスの答えに、シラユリは柳眉を僅かに逆立て、あからさまに不機嫌になる。
「な、何かあったのかね? 彼女と」
その急激な変化に驚きながらも、シロッカスはシラユリに問い掛ける。そのシロッカスの反応を見るに、サファイア側がシラユリの事を嫌っていたような雰囲気はなかったのだろう、と推察出来た。
「あのいけすかないバインバインのおっぱいお化けと仕事とか、何の嫌がらせだー! 前の時もあのおっぱい邪魔でしかなかったぞー!」
話している内に段々と腹が立ってきたようで、シラユリは両手を上げて抗議する。
しかし、その見た目の幼さ故か、そんな姿はどこか微笑ましい。
そんなシラユリに、シロッカスは困ったようにヒヅキに視線を送る。
その視線を受けて、ヒヅキはどうしたものかと頭をかいた。
「そういえば、人足の人たちの装備が前回までより重装になっているのですが、何かあったのですか?」
ヒヅキはシラユリを宥めて下手に刺激するよりも、話題を変えることを選ぶ。それに、質問の内容は最初見た時から気になっていたことだった。
「ああ、それは――――」
「ん? ヒヅッキーは知らないのかにゃー?」
シロッカスがヒヅキの問いに答えようと口を開くも、それをシラユリの声が遮った。
「シラユリさんはご存知なので?」
「勿論だよー」
そして、シラユリは実にあっさりとした声音でその理由を口にした。
「前線砦がスキアにどんどん落とされてるらしいよー」




