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旅路112

 周囲を見回した後、やはり真っ先に目につくのは、唯一置かれている家具である寝台だろう。

 寝台周辺や寝台の上に関してはある程度調べたが、寝台の下や藁などが詰められている中はまだ調べていない。しかし、寝床の中を調べるとなると、上で寝ている遺体が邪魔になってしまう。

 寝台の下となると寝台をどかさなければならないが、その場合は遺体を動かさなくても済む。調べた限りこの寝台には、引き出しなどの収納は付いていないようだ。

 とりあえず感知魔法を集中させて寝台の中を探れないかと考えたヒヅキは、寝台に感知魔法を集中させる。実際、感知魔法で透視の真似事ぐらいは出来る。壁の裏側を調べるぐらいは然程難しくはない。もっとも、それも術者と対象次第ではあるのだが。

 現在のヒヅキだと、何も魔法が施されていない普通の壁ならば裏側を調べる事が出来る。それでも壁から1、2メートルほど離れた辺りまでといったところ。感知を集中させればもう少し範囲は伸びるだろうが、おおよその目安としてはそれぐらいだろう。

 だが、壁に魔法を妨害するようなモノが仕込まれていた場合、残念ながら今のヒヅキでは難しい。弱い妨害魔法であれば、数センチメートル程度ならば調べられるだろうが。

 そういう訳で、ヒヅキとしても感知魔法の精度をもっと上げたいと常々思っていたし、努力もしている。魔力に敏感なおかげで感知魔法もそれなりに上達しているのだが、どうも魔力に敏感な割にヒヅキは感知魔法に対する適正があまり高くないようで、上達速度は他の魔法ほど高くはなかった。

 とはいえ、現在ヒヅキが意識を集中させている寝台に関して言えば。魔法を妨害するようなもののない普通の寝台のようなので、問題なく内部を調べる事が出来た。しかし。

(中身が詰まっているというのも考えものだな)

 寝台の中には、寝やすくなるようにと大量に藁が敷き詰められた大きな袋が入っていた。それ自体はおかしな事ではないのだが、問題は中に大量に藁が入っている為に、感知出来る対象があまりにも多いという事。そのせいで、個々としての輪郭がくっ付いてぼやけてしまい、もしも藁の中に何かが隠されていたとしても分からないかもしれない。

 ヒヅキは目を瞑って意識をより集中させる。これもまたいい練習になるだろう。仮にここで何かを見落としたとしても、おそらく問題は無いのだから。

 目を瞑り意識を集中させてからしばらくすると、ヒヅキは大きく息をつく。結局、ヒヅキが調べた限りでは中に何かがあるというような事はなかった。

 かなり意識を集中させていたので、ヒヅキは表情に疲労を滲ませ、息を整えるように大きく数度呼吸を繰り返す。そうして息を整えたところで、様子を見る為にフォルトゥナの方へと視線を向けてみると。

「うおっ!」

 階段の方に居たはずのフォルトゥナは、ヒヅキが視線を向けると目の前でジッとヒヅキを見詰めていた。そしてその距離がかなり近く、触れていないのが嘘のような距離感だった為に、思わずヒヅキは驚いて顔を少し後ろに反らしてしまった。

『階段の方はいいの?』

 驚きながらも、ヒヅキは気になったのでフォルトゥナに質問する。

『はい。どうやらここは隔離されていたようです』

『隔離?』

『はい。あの階段を上ると、何かしらの許可証がないと出られなくなる仕組みでした』

『それはどうしたの?』

『出る時に邪魔なので、解析後に破壊しておきました』

『……そっか。流石だねぇ』

『ありがとうございます!』

 さも当然とばかりに告げられた内容に、ヒヅキは諦めながらも内心ではまだどこか複雑な思いを抱きながら、感心したような呆れたような口調でそう返すと、フォルトゥナはヒヅキに褒められたと思ったようで、とても嬉しそうに言葉を返す。

 ヒヅキは自分では見つけるのも苦労しただろうなと思いながらも、フォルトゥナの報告に遺体の方に視線を戻した。

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