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旅路111

 寝台の上で横になっているのは、服装からいって女性のように思われた。しかし、全く動く気配がない。それどころか生気が感じられないので、おそらく既に息絶えているのだろう。

 ヒヅキは慎重に寝台に近づいてみる。そうして近づいてみると、寝台の上で横になっている人物は既に干からびているのが分かった。

 祈るような恰好をしているその人物の顔横には小瓶置かれている。

『服毒自殺でしょう』

 いつの間にやら横に居たフォルトゥナにヒヅキは少し驚いたような目を向けるも、それも一瞬で遺体の方に視線を戻す。

『自殺ね。そもそもこの者は何だったのか』

 こんな隠し部屋に居る人物が普通の人とは限らない。ただ、この部屋には壁や扉など外出を遮るものがない。なので、出ようと思えばいつでも出られただろう。つまり、ここに閉じ込められていたという訳ではなさそうだ。

 では、何故ここに居るのか。逃げ込んできたのか、隠されていたのか。何にせよ、本人から訊く事はもう叶わない。

 ヒヅキは特に目立った外傷もないその遺体に触れないように気をつけながら観察していく。その間、フォルトゥナは部屋やその周囲の様子を調べていく。

 遺体を調べて分かった事は、見た目は人に似ているという事だろうか。この遺体がここの国民と同じとは限らないが、それでも可能性は高いだろう。

 他はよく分からない。敢えて言うならば、遺体が着用している服に使われている布が上質そうだという事と、パサパサに乾いているのに、まだ頭皮に遺っている髪の毛の色が奇麗だと思わせる薄緑色だというところだろうか。

 美醜に関しては流石に分からない。皮膚がへばりつくように付着しているだけの骸骨など、ヒヅキではどうとも判断出来ない。それに美醜は地域によっても差異がある。

 後は、服装からヒヅキがおそらく女性だと推定している遺体だが、結構大柄だったようで、ヒヅキよりも身長が高かったと思われた。よく見れば、骨も1本1本が太く丈夫そうだ。

(ところ変われば品変わる。種族も分からないのだ、男性が俺からしたら女性ものに見える服を着るのが一般的なのかもしれないし、男性よりも女性の方が大柄な種族なのかもしれない。もしくは、これは個人の資質なのかもしれないし、実はこれで小柄という可能性だってある。なので、これだけではよく分からないな)

 そもそもからして、性別というモノが存在するのかどうかから考えなければならないだろう状況なので、ヒヅキはそれについては考えても無駄だと判断し、その疑問を頭の外に放りだす。

 とりあえず、ここに誰か居て、そしてここで死んだ。それだけ分かればいいかと結論を出したヒヅキは、フォルトゥナの方へと振り返る。

 ヒヅキがフォルトゥナの方に目を向けると、フォルトゥナは階段の段近くにしゃがみ込んで、階段に壁に天井にと、ぐるりと視線を向けている。

 どうやら何かを探しているようだ。その様子にそう考えたヒヅキだが、残念ながらヒヅキには何を探しているのか見当もつかない。感知魔法を使用して調べてみたが、階段付近に何かあるようにも思えなかった。

 それでもフォルトゥナが熱心に何かを探しているようなので、やはりそこには何か在るのだろう。それが何かまでは分からないが、とりあえず邪魔をしないようにだけはしようとヒヅキは思い、周囲に何かないかと目を向け見る。

 しかし、この部屋に在るのは寝台のみ。他に椅子1つ置いていない。窓も上の方に換気用の穴なのか小さいものが在るだけ。そのせいで外はまだ夕方だというのに明るさもかなり乏しい。

 ヒヅキが光球を浮かばせてみても、やはり寝台以外に何も無い。それでも暗いままよりかは何か発見があるかもしれないと思い、そのまま上空に浮かばせておく。

(まずはそうだな……)

 何も無い部屋ではあるが、それでも空間は在るし、床も壁も天井だって在る。何も無いからといって調べる場所が全く無い訳ではないので、ヒヅキはさて何処から手をつけようかと周囲をぐるりと見回して考えた。

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