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旅路110

 謁見の間を出て長い廊下を進む。

 直線の多いその廊下には足下に柔らかな絨毯が敷かれているが、もう長いこと手入れされていないので埃が積っている。

(見るからに、というほどではないのだが)

 足跡が残るとか、絨毯の色が変わるほどとかではないのだが、それでも踏むとその瞬間に埃が立ったなと分かるぐらいには汚れていた。

 ある時から窓が増えた為に、廊下をやや赤みを帯びた陽光が明るく照らす。それに照らされて埃がキラキラと舞っている。それだけ見れば幻想的で奇麗な光景だが、そこに居る者としては呼吸するのを躊躇しそうな光景だ。

 そんなヒヅキの考えを察したのか、フォルトゥナが風の魔法で埃を1ヵ所に纏めてくれる。

『ありがとう』

『これぐらいでしたらいつでも言いつけていただければ』

 そういえば魔法という手段も在ったなとヒヅキが感心すると、フォルトゥナは言葉の端に歓喜を滲ませながらも、真面目な声音でそう返してきた。

 フォルトゥナにとってはこの程度大した事はないのだが、それでもかなり魔力の扱いに慣れていないと難しいだろう。ヒヅキでも出来るが、フォルトゥナほど巧みにとはいかない。

 フォルトゥナが生み出した風の魔法が先行して埃を取り除いていく。大量に埃を集めていくので、本来不可視のはずの風の球体がどんどんとはっきりと姿を現していく。

 それにしても凄い埃の量だと、すっかり肉眼でも視認可能になった風の球体を眺めながらヒヅキは思う。

 ある程度廊下を進むと、廊下の途中途中に扉が現れる。扉と扉の間隔はかなり広い。

 その扉を開けて中を確認していくと、兵士の詰め所だったような場所と、武器庫っぽい場所などの物置にしていたような部屋が続く。

 廊下は何処までも伸びているようで、途中で階段や横道も在ったが、ヒヅキは廊下の終わりが気になったので、とりあえず全て無視した。

 そうしてズンズンと先に進むと、とうとう廊下の終わりに到着する。

『壁だけ?』

 廊下の終点はただ行き止まりとなっているだけだった。周囲を見回してみるも、部屋は確認出来ない。

 だが、流石にヒヅキも色々と学んでいるので、ここで行き止まりかと回れ右したりはしない。

(ここは何かと仕掛けが多いからな)

 隠し部屋や隠し通路。地下収納も隠されていたし、妙に凝った仕掛けがあったりもした。なので、仮に何もなかったとしても、探さないという選択肢は存在しない。もっとも、その辺りはフォルトゥナに尋ねれば直ぐに分かるだろうが。

 そう思ったヒヅキは、感知魔法で周囲を調べながらフォルトゥナに尋ねようとするも。

『そこの壁横に隠し通路か何かが在るようです』

 先にフォルトゥナが教えてくれる。

『壁横?』

 フォルトゥナの言葉通りにヒヅキが壁横を調べてみると、

『あ、これ幻影か』

 行き止まり近くの壁に幅1メートルちょっとぐらいの狭い通路が隠されていた。

 ヒヅキは恐る恐る手を幻影の中に突っ込んでみるも罠はないようなので、中に頭を突っ込んで壁の向こう側の様子を調べてみる。

『ここは隠し階段のようだね』

 幻影の向こうには、かなり急な角度の木製の階段があった。

『入り口は幅だけでなく高さもあまり無いから気をつけて。後、入り口の足下少し段差になっている』

 そうフォルトゥナに告げて、ヒヅキは壁の中に入っていく。

 壁の中は、奥行きはあまり無いのに見上げるような角度の階段。足を滑らせたら転がり落ちるというよりも転落するという方が正しそうだな、などと益体も無い事を考えながらも、ヒヅキは1歩1歩慎重に階段を踏みしめて上っていく。

 その後にフォルトゥナも続く。ギシギシと足下を鳴らしながら階段を上ると、程なくして上りきる。

 階段の先には、人一人が暮らすにも狭い部屋。そこにあるのは寝台がひとつだけ。他には何も無い。

 ヒヅキはその寝台に目を向けて、怪訝そうに眉根を寄せた。なにせ視線の先の寝台には、誰かが横になっていたのだから。

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