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旅路109

 隠し通路とその先を満足するまで調べたヒヅキ達は、隠し通路を通って謁見の間に戻る。

 謁見の間に戻ると、ヒヅキは壁際に並ぶ垂れ幕へと視線を向けて、そこに描かれている模様を確認した。

『やっぱり』

 視線の先には、記憶通りの模様が描かれた垂れ幕。それが何かの紋様なのかは知らないが、とりあえず起動装置の模様と同じだというのは確認出来た。

 フォルトゥナもそれを確認して頷いたので、ヒヅキの記憶違いという事はなさそうだ。

『次はあの扉の先に行ってみようか』

『はい。ヒヅキ様の御心のままに』

 玉座の正面に在る大きな扉。前回ここに来た時には後回しにしたが、調べたいところは調べたので、そろそろ先に進んでもいいだろう。

 隠し通路の入り口が在った玉座から真っ直ぐ進み、扉の前に移動する。少しして扉の前で足を止めると、ヒヅキは扉を見上げた。

 扉はいかにも頑丈そうで立派な造りの両開きの扉ではあるが、玉座の間という場所のせいかその表面は無駄な装飾が多く、見栄をこれでもかと誇示している。

 一応罠はないか調べてみるが、当然と言うか、そんなモノはなかった。だが、どうやら何らかの魔法道具が組み込まれているようで、僅かだが魔力を感知した。

『この扉、魔法道具が組み込まれているよね?』

 ヒヅキは念の為にフォルトゥナにそう確認を取る。もしかしたら感知したのは魔法の罠かもしれない。

『はい。攻撃性は無いようですので、おそらく扉の開閉を補助するモノではないかと』

『なるほど。確かに重そうだもんね』

 目の前の大きな扉を見上げながらヒヅキはそう呟く。普通に開けるならば、見た目からして片側の扉を開けるだけでも大人がニ、三人は必要だろう。そんなもの、見栄だけで運用するには使い勝手が悪すぎる。

 ヒヅキは警戒はしながらも、扉にそっと触れて僅かに力を籠めてみる。ただそれだけで、勝手に扉が開いていく。それはゆっくりとした動きではあるが、そんな事よりも、ヒヅキはそれを見て非常に驚き、その場で少しの間固まってしまう。

『かなり感度がいいのだな』

 呆然と零すような声音でそう口にすると、ヒヅキは固まっている間に離れていた扉に再度手を置き、ほんの少し力を籠める。たったそれだけで、巨大な扉が普通の扉を開閉するように開ける事が出来た。

「おっと」

 想像以上に抵抗が無かったために若干重心の移動に失敗して、ヒヅキは少しだけ前のめりになってしまう。

『凄い軽いな。見た目で判断して開けると、扉の向こう側の人を吹き飛ばせそうだ』

 扉から手を離したヒヅキは、未だゆっくりと開いている扉と手を交互に見て感心した声を出す。

『はい。しかし、出力よりも制御の方が高度のようです』

『制御?』

 重そうな扉を自動で開けている出力に感心していたヒヅキは、フォルトゥナの言葉に首を傾げて振り返る。

『はい。先程ヒヅキ様が扉を押した時に問題なく開き、今でも支障なく開いていますので』

『……ああ、なるほど』

 フォルトゥナの言葉を頭の中で咀嚼したヒヅキは、扉の方へと視線を向けながら、先ほどの自分の行動を脳裏に思い浮かべて納得する。

 つまり、動いているところに急に力が加えられても問題なく作動出来ているその制御に感心したらしい。フォルトゥナは魔力を視る事が出来るので、ヒヅキ以上に知り得たのだろう。

 扉の方は、直角まで開いたところで制止する。

 その状態でヒヅキは触れてみるが、動く様子はない。そのまま強めに押してみると扉は僅かに動いたが、とても重たかった。どうやら魔法道具の作動が停止したらしい。

『これ、閉める時はどうやるのだろうか?』

『おそらく扉を引くか、反対側から押せばいいのではないかと』

『ああ、それもそうか』

 ヒヅキの疑問にフォルトゥナが答えると、ヒヅキは一瞬だけ若干気恥ずかしげに口元を歪めたのだった。

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