旅路104
魔法道具を調べ終わったヒヅキは、直ぐ近くに居たフォルトゥナに、魔法道具の裏に魔石か何かがなかったか問い掛けてみる。
『この魔法道具の裏側に動力源がなかった?』
『これですね』
ヒヅキの問いに、フォルトゥナがそう言って空間収納から取り出したのは、テラテラと輝く毒々しい色合いの大きな何か。
『………………えっと?』
その見た目は、横に長い金属製の箱。まるで粘液でも付着しているような輝きは、そういう色合いというだけのようで、実際に何かしらの粘液が付着している訳ではないようだ。
大きさは子どもよりも大きく、フォルトゥナが抱えるようにして持ってはいるが、とても重そうな見た目の為に今にも前に倒れてしまうのではないかと思える程。もっとも、フォルトゥナは軽々と持っているようなので、実際は見た目ほど重くはないのかもしれない。
そして、ヒヅキでは見ただけでそれが何かまではよく分からなかった。ヒヅキの問いにフォルトゥナが取り出したのだから、それは動力源ではあるのだろうが。
『非常に不甲斐ない事なのですが、この金属に関しては知識に在りませんでしたので分かりません』
『そうなんだ』
『この表面の輝きも魔法によるものではと愚察致しますが、こちらもまた詳しくは不明です』
申し訳なさそうに頭を下げたフォルトゥナに、ヒヅキは気にする必要はない事を告げる。ヒヅキ自身もよく分からないのだ、それよりも表面の輝きが魔法による輝くだと分かっただけでも十分だろう。
『それにしても、これが動力源ね……』
弱弱しい魔力反応しか感じられないその金属に、ヒヅキは本当にこれが動力源なのだろうかと首を傾げる。
その疑問を理解したのだろう、フォルトゥナは手元の金属に視線を落として答える。
『おそらくですが、この金属が魔力を閉じ込めているのではないかと。これが使用されていた時は、魔法道具と線のようなモノで繋がっていたので、その線を経由して中から魔力を供給していたのではないかと』
『ふぅん?』
フォルトゥナの説明に、ヒヅキは頷きつつ首を捻った。
説明の内容については分かったが、聞いたことがなかったので、イマイチ想像出来なかったようだ。
そんなヒヅキに見せるように、フォルトゥナは向きを変えて手に持つ金属の片側がよく見えるように身体を動かす。
そうすることで確認出来た長方形の金属の辺が短い方には、何やら細く短い紐のようなモノが2本垂れ下がっていた。
『この紐のような線で繋がっていました。魔法道具側からも伸びていたので、元々はもう少し長かったのですが……』
『切ったの?』
『はい。外そうにも仕組みがよく分からなかったので』
『無事でよかったよ』
『ありがとうございます。ですが大丈夫です。ちゃんと問題がないか確認して切断したので。この線は魔力を供給していただけで、罠などは一切確認出来ませんでしたので』
『ならいいけれど。それにしても、中はどうなっているのやら』
魔力を供給していたというのは分かっているので、中には魔力が詰まっているか、魔石のようなものが入っているのだと予想出来たが、はじめて見るモノだけに興味が尽きない。
『おそらくこの金属は、中の何かを囲うようにして作られているので、この金属の箱をどうにか出来ればいいのですが……』
『まぁ、仮にそうだったとしても、何が起きるか分からないから強引に壊す訳にはいかないからね』
『はい』
フォルトゥナの言葉に、ヒヅキもしょうがないと同意する。もしも強引に壊した瞬間爆発するとかだったら、中身を調べるどころではなくなってしまう。威力如何によっては身の心配までしなければならないだろう。
そういう訳で、何が仕掛けられているか調べられない以上、どうすることも出来なかった。
そのまま見ていてもしょうがないので、フォルトゥナはその動力源を空間収納に仕舞う。
他に宝物庫内に気になるモノも無かったので、とりあえず少しだけ残っていた魔石を回収して、二人は宝物庫を出る事にした。




