旅路102
横道の先には少し罠があったものの、気をつけていれば問題ない罠ばかりだったので、ヒヅキ達は難なく宝物庫の前に到着する。
『ふむ。ここまで来るとよく分かるな』
『はい。おそらく大型の魔法道具なのではないかと』
『大型? だからここに置いていったのかな?』
『おそらくは』
宝物庫の前にまで来ると、流石に感知が妨害されていても中に魔法道具が在るというのが分かる。それとともに、宝物庫の入り口に厳重に罠が仕掛けられている事も。
『正規の方法は無理だからな』
そんな大きめの扉を眺めながら、ヒヅキは困ったように首を傾げる。正規の方法というのは当然、鍵を使用して普通に扉を開けるという方法だ。
しかし、当たり前だがヒヅキ達は鍵など持っていない。そもそもここに宝物庫らしき場所が在ると知ったのはつい先ほどだし、実際に中に何が入っているかとなると未だに分からない。
『ん~触れるぐらいでは起動しないかな』
観察した後に用途を考えてそう判断したヒヅキは、扉に触れて魔力を流していく。フォルトゥナが特に何も言わないので、間違ってはいないのだろう。
魔法道具を調べる時のように魔力を流して調べてみると、直ぐに罠を発見する。幸いと言うか何と言うか、仕掛けられていた罠は魔法道具だったようで、ヒヅキだけでも何とかなりそうだった。
陣までとは言わないが、いつかは魔法の罠も解除出来るようになりたいものだと思いながら、ヒヅキは仕掛けられている魔法道具を調べていく。
調べるだけなら手慣れたもので、直ぐに調べ終わる。多少複雑ではあったが、それぐらいであればもう問題にもならない。
扉に仕掛けられている罠の解除も驚くほどすんなりと終わった。ヒヅキは罠を見つけた時には、無力化にそこそこ時間が掛かりそうだなと思ったものだが、実際にやってみると想像以上にヒヅキも成長していたらしい。
無力化した他にも罠がないか、別の魔法道具が仕掛けられていないかを念入りに調べた後、フォルトゥナにも罠がないかを確認してもらい、ついでに扉を消してもらった。
大きめの扉を破壊するなら、ヒヅキの手札では爆破が最適だろうが、それは危ないので簡単確実な方法を選んだという訳だ。その後の事など知った事ではない。
罠の解除は必要なかったかな? と思わなくもなかったが、それはいい練習になったということで流し、消えた扉の先に目を向ける。
宝物庫の中は真っ白な石で奇麗に整備された部屋で、明らかに外の洞窟然とした雰囲気とは異なっていた。
広さは結構あり、子どもの遊び場としても機能しそうなほど。そんな場所に、2階建ての建物ほどの大きさの物が鎮座している。
『デカい魔法道具だな……』
今まで見てきた中でも最大級ではないかと思われるそれに、ヒヅキは一瞬圧倒される。前衛芸術のような見た目のそれを確認したヒヅキは、罠がないか確認してから、恐る恐るそれに触れて何の魔法道具か調べていく。
そんなヒヅキの横で、フォルトゥナは巨大な魔法道具の裏に回って歩いていく。そちらにも何かあるのかもしれないが、ヒヅキにはそれに構っている余裕はなかった。
巨大な魔法道具は、巨大なだけに内部に魔力回路が縦横無尽に張り巡らされていて、それでいながら広さを活かして幾つもの魔法と罠を組み込んでいるらしい。特に力を入れているのが防壁のようだ。その次が妨害。
(防壁? そんなものあったかな?)
ヒヅキは内心で首を捻りながらも調べてみると、防壁の方は破損しているようだった。それもつい最近壊れたらしい。
何故だろうかと更に疑問が増えたが、ヒヅキは頭を切り替えて、とりあえず今は妨害の方を無力化する事にした。
それから少しして、組み込まれていた妨害の魔法をヒヅキは問題なく無力化する。そうすると、先程まで鈍かった感覚が急にはっきりとした感じがした。




