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旅路100

 ヒヅキはフォルトゥナと共に来た道を戻り、謁見の間の前に在る覗き部屋に到着する。

 覗き部屋に到着したところで、ヒヅキは1度そこから謁見の間の様子を窺ってみる事にした。

「んー?」

 しかし、どれだけ注意深く見てみても、前回覗いた時と比べて変わった場所は確認出来ない。布の壁が邪魔で全体を見渡せるわけではないが、それでも見たところ先程と何も変わっていなかった。

 耳を澄ませても何か音がするという訳でもないので、フォルトゥナの言葉が無ければ、ここに何かがあるなどと気づかなかったかもしれない。いや、今でも半信半疑と言えるのだが。

 誰かが居るという事もなさそうなので、ヒヅキは扉から謁見の間に入る。

『それで、何処に仕掛けが?』

『こちらのようです』

 玉座の前まで移動したヒヅキの問いに、フォルトゥナは段を上って玉座に近づく。

 ヒヅキがその後に付いていくと、先に玉座に到着したフォルトゥナは観察するような視線を玉座に向けた後、玉座を掴み、軽く持ち上げるようにしながらそれを回す。

 それで玉座がクルリと回る。ただ置いただけの椅子ではそんな動きは出来ないだろうという軽やかな動きに、ヒヅキは一瞬呆気にとられた。

 玉座は半回転したところで止まり、そのまま後ろに下がる。そして、玉座が置かれていた場所の下から小さな箱のようなものが出てきた。

『それは?』

 その箱を取り出したフォルトゥナへと、箱に視線を向けたままヒヅキは問い掛ける。

『中に大きめの魔石が入っているようですね』

 そう言ってフォルトゥナはヒヅキにその箱を差し出す。

 箱を受け取ったヒヅキは、箱を調べてから開けてみる。そうすると、手のひらに収まるぐらいの大きさがある箱一杯の大きさの魔石が入っていた。

『これは大きいな』

 それだけでどれだけの価値になるか。まさに国宝と言える大きさで、ヒヅキは箱から取り出してそれを眺めてみる。

 透明度で言えば、以前見つけた人口の蓄魔石よりも濁っているが、それでも自然物としては十分な透明度だろう。

 そうしてヒヅキが大きな魔石に驚いているなか、フォルトゥナは箱が納められていた場所を更に調べ、次の仕掛けを起動させる。

「………………」

 仕掛けを起動させたフォルトゥナは、玉座が置いてあった場所の後方に視線を向ける。そこには謁見の間の壁に垂れ下がっている布よりも大きな布が掲げられていた。そこに描かれているのは、おそらく国章なのだろう。

 フォルトゥナはその垂れ幕を払って後ろを確認する。そうすると、垂れ幕の裏側には人一人分が通れるほどの穴が開いていた。その奥は暗いが、どうやら通路のようだ。

(脱出路? いやしかし、この感じは……)

 奥から吹いてくる風を微かに感じた気がしたフォルトゥナは、そこがもしもの為の脱出路か何かだと考えるも、それとは別の気配を感じて首を捻る。感知が妨害されているのか詳細は分かりにくいが、それは魔法道具の保管場所のような、そんな気配。

『ん? そこに何か在るの?』

 魔石から意識をフォルトゥナの方に向けたヒヅキは、そこでようやくフォルトゥナが垂れ幕の後ろを覗いているのに気がつく。

『隠し通路が在りました』

『隠し通路……ここは仕掛けばかりだな』

 呆れたような声を出したヒヅキは、魔石を仕舞ってフォルトゥナの後ろから通路を覗き込む。

『この先は?』

『おそらく外に出ると思いますが、途中に何か在るかもしれません』

『何かって?』

『宝物庫か何かだと存じますが……』

『ふむ』

 フォルトゥナの返答に、ヒヅキは少し考え込む。

『何か罠はある?』

『今のところは確認出来ておりません』

『そうか……なら、少し先に行ってみるか』

『はい』

 ヒヅキは先に進むと決めると、警戒しながらも通路の中に入り、暗い通路を現出させた光球で照らした。

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