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旅路98

 左を選んだ後、そのまましばらく廊下を進む。

「ん?」

 2度ほど角を曲がりはしたが、ほぼ直進の廊下を進むと突き当たりに到着する。そこには通路の終わりを報せる壁しかない。通ってきた廊下に扉や横道は無かったので、何の為かは不明なれど、ただ廊下があっただけだという事なのだろう。

 ヒヅキが行き止まりの壁を眺めながら首を捻っていると、フォルトゥナが前に出てきて壁に触れる。

 何かあったのだろうかと思ったが、ヒヅキはとりあえず静かに見守る事にした。

 それから少しすると、突然壁が消失する。

『何をしたの?』

 幻だったかのように跡形もなく消失した壁が在った場所に視線を向けながら、ヒヅキはフォルトゥナに問い掛ける。

 ヒヅキは一瞬、フォルトゥナが消滅魔法を使用したのだと思ったが、しかし思い返してみれば消滅魔法の時とは消え方が違ったので、おそらく違うだろうと考え直す。

 問われたフォルトゥナは壁が消えたのを確認すると、隅の方で何かを拾ってからヒヅキの方に振り返る。

『壁が魔法道具で創られたモノだったので、壁を創りだしていた魔法道具を止めました』

『そうなんだ』

『はい。それで、これがその魔法道具です』

 そう言ってフォルトゥナが差し出したのは、壁の欠片のような物だった。

『これが魔法道具?』

 ヒヅキはそれを手にすると、まずは様々な角度から眺めてみる。

 それは1辺が数センチメートルほどの四角い形をしており、欠片というには整っているが、脆くなっているのか少し力を入れるとパラパラと地面に粉が落ちていく。

 材質についてヒヅキはあまり詳しくないが、黄みを帯びた白色でざらざらとした手触りをしている。形が整っているという部分以外はそれほど目を引く物でもないだろう。

 外観の観察が終わったところで、ヒヅキは調べる為にそれへと慎重に魔力を流してみる。

「………………」

 慎重に魔力を流したところ、確かにそれはフォルトゥナが言うように魔法道具だった。

 調べてみると、魔法道具としては単純な造りのようで直ぐに調べ終わる。罠などもないようで、驚くほど簡易な魔法道具であった。

 魔法道具の中身は物質の創造とでも言えばいいのか、つまりは先程見たような壁を創り出す魔法道具らしい。

「………………」

 その微妙な効果に、ヒヅキは少し困ったような表情を浮かべる。

 確かに壁の創造は凄いとは思うが、しかしそれだけだ。行き止まりに偽装するぐらいしか役には立たない。それもフォルトゥナのような存在からしたら簡単に見破られてしまう程度の壁。

 もっとも、資料としては役立つかもしれない。1度魔法道具が起動した場合も確認した方がいいかもしれないが、調べた限り危なそうという感じはしなかった。

『これはどうしたいいと思う?』

 弄ぶようにして手のひらで転がしながら、ヒヅキはフォルトゥナに問う。持って帰って魔法道具の資料にしてもいいが、かといってどうしても欲しいという訳でもない。

『ヒヅキ様のお好きなようになされては? 所有者も居ないようですので』

『まぁ、それは確かに』

 この家に戻ってくるかどうかは分からないが、現在は誰も居ないのは確実だろう。ならば、この程度持っていっても問題ないだろう。

(扉とか壊している方が問題だろうし)

 そういう事にして、ヒヅキは安全の為に一時的に魔力回路を閉ざして背嚢に魔法道具を突っ込んでおく。

 魔法道具を背嚢に仕舞った後、ヒヅキ達は壁が在った先へと進む。壁の先も、廊下としての造りは同じように見える。

『こちらの方にも何も無い?』

 しばらく道を進んでも、廊下が在るだけで扉は無い。少し先に曲がり角が在るのでそこに期待するしかないのか、それとも見落としているのか。

 そんな思いからヒヅキはフォルトゥナに声を掛けた。それにフォルトゥナは小さく首を傾げる。その仕草からヒヅキは、今まで何か隠し扉のようなものは無かったのだろうと思ったのだった。

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