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旅路96

 結局のところ、声の主が石の中身を吸収しているようだ。という推測が立つだけで、それ以上は不明。真偽を確かめる術もなく、これ以上はどうしようもない。

 とりあえず害にはならなそうだと感じてはいるが、これも根拠が無いので断言はできないだろう。

(相変わらず、分からない事だらけだな)

 小さく息を吐き出すも、旅に出てから分かる事の方が少なかった。慣れたというよりも、ヒヅキはもうその辺りは諦めている。

 次に会った時にでも訊けばいいかとヒヅキが考えを横に措いたところで、やっと石の中身の吸収が終わた。

『変わった形ではあるが、それ以外はこれだとただの石だな』

 中身が無くなった石を眺めた後、ヒヅキは何となくそれをフォルトゥナに渡す。

『そうですね。この状態でも結界は生きているようなので、非常に硬い石といったところかと』

『なるほど。そういえば結界が張ってあるのだったか』

 フォルトゥナの言葉に頷いたヒヅキは、フォルトゥナが持つ石に目を向ける。しかし、ヒヅキでは結界については分からなかった。

 石を眺めながら首を捻ったヒヅキを見て、フォルトゥナは理由を察したようで、石をヒヅキが見やすいように差し出しながら告げる。

『この石に張られている結界は、隠蔽されていて非常に感知しにくいうえに規模が小さすぎるので、よほど結界に触れた者でなければ感知は難しいかと』

『そうなんだ』

『私はエルフの国で結界に関することにも携わっておりましたので、その関係で結界にも詳しくなっただけです』

 そこまで言われれば流石に自分が気遣われているというのが分かるので、ヒヅキは内心で苦笑しつつ頷く。

 石を戻した後、ふたも掃除道具の山も消してしまったのでどうしたものかと少し考えたものの、別にそのままでも問題ないかと開き直る事にした。もう気にせず扉を壊しているので、それも今更な葛藤だろう。

 それでも出した石だけは地下収納の中に戻したので、忘れ物がないか1度部屋を確認した後、ヒヅキ達は部屋を出る。

 他にも幾つか部屋があったのでそちらを調べていくと、建物の奥へと続く通路を見つける。造りが通ってきた通路よりも丁寧なようなので、今までの建物と建物を繋げるだけの通路ではないようだった。おそらく建物内に在る普通の廊下なのだろう。

 最初の方で見つけた階段も気になるが、まずは同じ階の散策をしてみる事にする。

 やや長い廊下が終わると、その先で狭い部屋に出る。部屋には、小さな机とそれを挟むように簡素な椅子が2つ置いてあったが、他には何も無い。

『おや?』

 その机の先に扉があったが、ヒヅキはそれから離れた場所の壁にのぞき穴の存在を見つける。最初の建物で使用人の仕事ぶりを見る為なのか、似たようなのぞき穴が開けられた部屋を発見していたヒヅキは、それと似たようなモノなのだろうと思った。

 のぞき穴に近寄ってみると、音が聞こえるようにか、のぞき穴の近くに小さな穴が無数に開けられている。

 ヒヅキは静かにのぞき穴から奥の様子を確かめてみると、壁の先にはかなり広い空間が存在しているようだ。

 のぞき穴から見える範囲だけ視線を送り、得られるだけ情報を収集していく。

 その結果、どうやら壁の向こう側は謁見の間とでも言えばいい場所なのだと判明する。

 広い空間に奥の数段高い場所。そこに置かれた一際豪奢な椅子は王が座る場所だろう。その隣の豪奢な椅子は王配が座る席だろうか。

 のぞき穴は、そんな場所を横から見られるように開けられていた。のぞき穴の位置は豪奢な椅子が置かれている方寄りなので、のぞき穴からなら謁見した者の顔ぐらいは確認出来るかもしれない。

 ヒヅキはのぞき穴から顔を離すと、離れた場所の扉に目を向ける。

 こんな場所に扉があると向こうから怪しまれそうだがと思うも、向こう側で巧く隠しているのだろう。扉に触れてみるとそれは絵などではなく、確かにそこに存在していた。

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