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旅路95

 今度は何も変化が起きなかったので、ヒヅキは安心して観察してみる。

(うーん。やはり外見上は、ただの変わった形の石ころだな)

 中から微弱な力を感じ取れなければ、どう見てもただの石でしかない。その微弱な気配も、普通の者では感知は難しいだろう。という事は、この石は偶然収集品のひとつとして紛れ込んだだけ、という可能性もある。

 もっとも、実際はどうかは知らない。もしかしたら意図的にここに隠したのかもしれない。似たような石の中なので、気配を感知出来ない者が偶然この場所を見つけたとしても、興味がないという理由でろくに探さないかもしれないのだから。

「………………」

 そうしてヒヅキが石を観察していると、段々とだが中の気配が弱くなっていくような気がしてくる。元々微弱な気配だったので、もしかしたら気のせいという可能性もあるにはあるが。

 それに気づいたヒヅキは、石に意識を集中して気配を探る。そうすると、間違いなく気配が弱くなっているのが分かった。

『気配が弱くなっていってない?』

 確認の為にフォルトゥナに問うと、フォルトゥナは難しい表情で石に視線を向けていた。

『はい。どうやら石の中身が外に……ヒヅキ様の中に入って、いえ吸収されていっているようですね』

『吸収?』

 冷静にそう告げるフォルトゥナに、ヒヅキも冷静に問い返す。フォルトゥナが焦っていないということは悪い事ではないのだろうし、ヒヅキ自身も違和感なども感じていない。むしろ、フォルトゥナに言われるまでその事に気が付いていなかったほど。

(しかし、吸収ね……)

 内側に意識を向けてみると微かに動いている力を見つけ、それでやっとフォルトゥナが言っていることが理解出来る。ヒヅキはその程度の変化を察したフォルトゥナに感心する。この辺りは慣れもあるのだろう。

 吸収した力の行方だが、1度の吸収量があまりにも微量過ぎて、行方を追っても途中で周囲に溶けてしまっている。

 体調の方は今のところ変化なし。吸収しているモノが悪いものという感覚も無いので、多分大丈夫だろう。ただ問題は、ヒヅキに吸収しているという意識が無い事だ。

(無意識で吸収しているという事か?)

 フォルトゥナは中身がヒヅキに入り込んでいるのではなく、ヒヅキが中身を吸収していると言っていた。つまり、ヒヅキが主動で石の中身を吸いだしているという事になる。

 だというのに、ヒヅキにその意識はない。という事は、無意識の内に石の中身を吸収していたか、あるいは。

(何らかの力が働いているのか……)

 それが何かは、吸収している今でも分からない。調べても石の中身がヒヅキの中に吸収されているということしか分からず、それを行っている何かまでは不明なまま。

(思い当たる節としては神や女性やクロス……いや、最有力候補はあの声の主か)

 ヒヅキの意思とは無関係に働いているそれに、ヒヅキは意識が無い時に稀に話しかけてくる声の主が犯人だと推察する。他の者達もヒヅキの無意識に働きかけて何らかの行動を起こさせることは出来るだろうが、それでも、ヒヅキの中に最初から存在する相手程確かではないだろう。

(何をさせたい、もしくはしたいんだ?)

 ヒヅキは声の主の思惑を考えるが、情報が無さ過ぎてよく分からない。今まで話した限りでは、ヒヅキに対して敵意や害意は感じられなかったが。

 もっとも、それらは全て推測でしかない。これがもしかしたら、隠されたヒヅキの能力だという展開も無いとは言えないだろう。

(いや、無いな)

 そんな考えが浮かんだところで、ヒヅキは直ぐさまその考えを棄てる。隠された能力の開花などという展開は、否定はしないが肯定は到底不可能だろう。世の中そう都合よくは出来ていない。

 であればこそ、やはり最有力候補は声の主という事になる。とはいえ、結局分かるのはそこまででしかないが。

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